OBS Studio(以下OBS)でHDR映像をHDR動画として録画には、複数箇所の設定を変更する必要があります。
具体的には、
- 各ソースの設定(例 : 映像キャプチャデバイス、ゲームキャプチャ)
- 「設定」→「詳細設定」
- 「設定」→「出力」
という3つの設定をOBS側で行いましょう。
また、今回は
- Switch2、PS5
- PCゲーム(例 : Steam)
の録画を想定しています。
すでにOBSの基本的な使い方を理解していることを前提としています。
ライブ配信の場合もほぼ同じ設定です。ただ、HDR配信に対応しているサイトはYouTubeのみです。
目次
必要なもの
チェックリスト
前提として、OBSでHDR録画するためには以下のものが必要です。
- HDR対応モニター
- HDR対応ケーブル(デスクトップPCの場合)
- HDR対応ゲーム機・ゲームソフト
- HDR対応キャプチャーボード(Switch2、PS5の場合)
ゲームソフトがHDR対応でないとダメ
ゲームソフトがHDRに対応しているか確認してください。
注意したいのは、たとえば初代Switch用のゲームをSwitch2でプレイする場合です。『スプラトゥーン3』はHDRに対応していません(2025年7月時点)。
▲公式サイトに掲載されている情報を見ると、『スーパーマリオ オデッセイ』などは「HDRに対応」と書いてあるのに対し、『スプラトゥーン3』にはその表記がありません。
HDRに対応していないゲームの場合、OBSの設定をHDR用に変更すると違和感があるかもしれません。
PCゲームについても同様です。
キャプボはHDR録画対応でないとダメ
キャプチャーボードについては、
- パススルー出力のみHDR対応であるもの(HDR録画は非対応)
- 録画「も」HDR対応であるもの
という2種類があります。
用意すべきは2番めの製品です。たとえば、「GC553Pro」や「Elgato 4K S」などを用意しましょう。
HDR出力を有効にしよう
ここも前提となる部分です。ゲーム側でHDR出力を有効にします。
Switch2、PS5の場合
たとえば、Switch2の場合は以下のように設定してください。
- 「設定」→「ディスプレイ」の順に選択する。
- 設定画面を下にスクロールし、「テレビ」の「HDR出力」を「対応ソフトのみON」または「常にON」にする。
PS5の場合は以下のとおりです。
- 「設定」→「スクリーンとビデオ」の順に選択する。
- 「映像出力」の「HDR」を「対応時のみオン」または「常にオン」にする。
PCゲームの場合
SteamなどのPCゲームの場合は、そのゲームのオプション設定でHDR出力を有効にします。
PCゲームでHDRを有効にできない場合は、Windows側の設定も確認しましょう。
- 「スタート」ボタンをクリックする。
- 「設定」→「システム」→「ディスプレイ」→「HDR」の順にクリックする。
- 「HDRを使用する」を「オン」にする。
「映像キャプチャデバイス」の設定をしよう
「解像度/FPS タイプ」を「カスタム」に
Switch2やPS5の場合、キャプチャーボードを接続して「映像キャプチャデバイス」を追加します。
つぎに、「映像キャプチャデバイス」の設定画面で「解像度/FPS タイプ」を「カスタム」にしてください。
すると、「解像度」や「フレームレート」の設定が手動でできるようになります。
HDR対応の解像度・フレームレートに
そして、ここが重要なのですが、使用中のキャプチャーボードのHDR録画に対応している解像度・フレームレートを設定しましょう。
たとえば、GC553Proであれば1080p/60fpsがHDR録画に対応しているため、以下のように設定します。
- 解像度 : 1920x1080
- FPS : 60
このとき、「解像度」は3840x2160にはしません。なぜなら、GC553Proの場合、4K解像度はHDR録画に対応していないからです。
映像フォーマット
「解像度」と「FPS」の設定ができたら、「映像フォーマット」で「P010」を選びましょう。
この「P010」は、「解像度」と「FPS」の設定を正しく行わないと表示されません。HDR録画で必須の設定なので、注意してください。
色空間・色範囲
「色空間」を「Rec. 2100 (PQ)」にします。一般的なゲームのHDR映像の色空間は、Rec. 2100 (PQ)というものだからです。
そして、「色範囲」を「リミテッド」または「フル」にしましょう。ゲーム機側の出力設定に合わせます。
たとえば、Switch2であれば「設定」→「ディスプレイ」→「RGBレンジ」の部分を確認し、その部分とOBSの「色範囲」の設定を一致させるのが基本です。
また、2台のPC + キャプチャーボードの場合は、出力PC側の「NVIDIA コントロールパネル」を開き、「解像度の変更」→「出力のダイナミック レンジ」をOBSの設定と一致させてください。
「ゲームキャプチャ」の設定をしよう
PCゲームの場合、「ゲームキャプチャ」を追加します。
そして、「ゲームキャプチャ」の設定画面にある「RGB10A2 色空間」を「Rec. 2100 (PQ)」にしてください。
HDR映像として扱うための設定をしよう
カラーフォーマット
「映像キャプチャデバイス」や「ゲームキャプチャ」のHDR用の設定ができたら、つぎは「設定」→「詳細設定」を開きましょう。
そこにある「カラーフォーマット」を「P010 (10-bit, 4:2:0, 2 planes)」にします。
色空間・色範囲
「色空間」を「Rec. 2100 (PQ)」にします。これもやはりHDRの色空間として一般的に使われています。
「色範囲」を「フル」または「リミテッド」にします。HDR録画の場合、前者を推奨する人が多いのですが、どちらが正解かと問われるとなんとも言えません。
▲「フル」または「リミテッド」にします。実際に試してみて、自分で満足するほうにしてください。筆者は後者にしています。
エンコーダーの設定をしよう
最後に、「設定」→「出力」を開いてHDR用の設定に変更しましょう。設定はもう少しで完了です。
まず、「出力モード」を「詳細」にして、「録画」タブを開きます。ライブ配信の場合は「配信」タブを開きます。
そうしたら、「映像エンコーダ」を「NVIDIA NVENC HEVC」、または「NVIDIA NVENC AV1」などにしてください。
▲「NVIDIA NVENC HEVC」は、RTX/GTXシリーズを搭載するPCで表示されます。
▲「NVIDIA NVENC AV1」は、RTX 40シリーズ以降を搭載するPCで表示されます。それ以外だと表示されません。
高画質なのはAV1ですが、動画編集ソフトがAV1動画の読み込みに対応しているか事前に確認しておきましょう。無難なのはHEVCです。
ここで重要なのは「NVENC H.264」など「H.264」が入っているものを選ばないようにすることです。なぜなら、H.264はHDR映像に対応していないからです。
「映像エンコーダ」の設定後、「プロファイル」を「main10」に変更してください。HDR映像は8bitではなく10bitの色深度を使うため、これを選びます。
「映像エンコーダ」をH.264にすると「main10」は表示されません。
動画再生・YouTube投稿時の注意点
以上で設定は完了です。OBSでHDR録画し、動画を実際に確認してみましょう。

動画の確認には、「VLCメディアプレイヤー」などHDR映像に対応したアプリを使います。
同アプリであれば、HDR映像かどうかを確認できます。動画再生後、「ツール」→「コーデック情報」を見てください。
また、HDR動画をYouTubeに投稿した場合、HDR動画として認識されるまで時間がかかります。
13秒程度の短い動画であるにもかかわらず、早くて3時間、遅ければ24時間以上かかることもありました。
さらに、HDR環境でのみ、画質設定のところに「HDR」の文言が表示されます。SDR環境だと「HDR」の文字は表示されません。
トーンマッピングは不要
HDR映像を「SDR」動画として録画する場合は、トーンマッピングという変換作業が必要です。
しかし、今回の場合はHDR映像を「HDR」動画として録画するのが目的です。
したがって、トーンマッピングは必要ありません。
暗い、薄い、白飛びするなど、色がおかしい場合は
HDR映像を扱ううえで、どうしても避けられないのが「色がおかしい」という違和感です。
これについては、さまざまな原因が考えられます。
- OBSやWindowsの設定ミス
- モニター、ケーブル、ゲーム機、ゲームソフト、キャプボがHDRに対応していない(上述)
- ゲーム機のHDR出力がOFFになっている(上述)
- PCゲームのHDR出力がOFFになっている(上述)
- モニターのHDRがOFFになっている
- ゲーム機側のHDR調整ができていない
- アプリ、サイトがHDRに対応していない
- YouTube側の仕様(数日は待ってみる、上述)
- 視聴環境がHDRに対応していない
- 特定のモニターとのあいだで、なにか問題が起きている
- じつはその違和感のある映像が仕様
下記ページでは、OBSで色がおかしい場合の対処法をまとめました。最悪、SDR録画も試すべきです。その設定も掲載しました。参考にしてください。

設定まとめ
HDR録画する場合の設定を表にまとめました。
設定 | |
「映像キャプチャデバイス」の設定 | ・「映像フォーマット」を「P010」に ・「色空間」を「Rec. 2100 (PQ)」に ・「色範囲」を「リミテッド」または「フル」に |
「ゲームキャプチャ」の設定 | ・「RGB10A2 色空間」を「Rec. 2100 (PQ)」に |
「設定」→「詳細設定」 | ・「カラーフォーマット」を「P010 (10-bit, 4:2:0, 2 planes)」に ・「色空間」を「Rec.2100 (PQ)」に ・「色範囲」を「フル」または「リミテッド」に ・「SDRホワイトレベル」は「300 nits」で(100や200もOK) ・「HDR公称ピークレベル」は初期設定のまま |
「設定」→「出力」 | ・「出力モード」を「詳細」に ・「録画」タブの「映像エンコーダ」を「NVIDIA NVENC HEVC」または「NVDIA NVENC AV1」などに ・「録画」タブの「プロファイル」を「main10」に |
色以外の部分で画質に問題がある場合は、下記ページをご覧ください。高画質録画用の設定例をまとめました。

なお、HDR用とSDR用の設定を使い分けたい場合は、OBSのプロファイルを使うと便利です。
同機能を使えば、HDR用とSDR用の設定を一瞬で切り替えられます。つまり、毎回設定しなおす必要がありません。便利なので、ぜひ使ってみてください。

2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。