OBS Studio(以下OBS)でゲームを録画したさい、「なんだか映像が荒い、モザイクのようだ」と感じたことはないでしょうか。
これはブロックノイズと呼ばれるもので、画質設定が適切でないときに発生します。
しかし、対処法は簡単です。高画質録画できるように設定を少し変更してやればよいのです。
ポイントだけ見ていきましょう。細かい話や難しい話はありません。
録画用の記事です。
ライブ配信の場合は、「OBS Studioで高画質な配信をする方法」をご覧ください。
目次
最初にこの設定にしよう
まず、前提となる設定を行います。「設定」ボタンをクリックしてください。
そして、以下のように設定します。
- 「出力」タブを開く
- 「出力モード」を「詳細」にする。
- その下にある「録画」タブを開く。
- 「種別」を「標準」にする。
「出力モード」は「基本」でもよいのですが、今回は「詳細」で統一しました。「基本」は「詳細」よりも設定が省かれており、設定の表示名も異なります。
また、「種別」は「カスタム出力 (FFmpeg)」でもよいのですが、「標準」で統一しました。
「映像エンコーダ」に注意
大きく2種類
ここまで設定できたら、つぎに重要なのが「映像エンコーダ」の設定です。
ややこしいのですが、環境によって表示される項目が異なります。下表をご覧ください。
説明 | |
x264 | すべてのPCで選択できる |
NVIDIA NVENC H.264 | GPUがGTX/RTXシリーズの場合に選択可能 |
NVIDIA NVENC HEVC | 同上、HEVCの別名はH.265 |
NVIDIA NVENC AV1 | GPUがRTX 40シリーズの場合に選択可能 |
AOM AV1 | 通常は選ばない |
SVT-AV1 | 通常は選ばない |
QuickSync H.264 | インテル製の内蔵GPU(第5世代以降)の場合に選択可能 |
QuickSync HEVC | インテル製の内蔵GPU(第6世代以降)の場合に選択可能 |
H264/AVC Encoder (AMD Advanced Media Framework) | AMD製の内蔵GPU、Radeonの場合に選択可能 |
アップル VT H264 ハードウェアエンコーダ | Macの場合に選択可能 |
どれを選ぶかによって、画質・PC動作の重さに影響する部分です。なかなか迷ってしまうかもしれません。
もし「NVIDIA NVENC H.264」が表示される環境の場合は、優先的にこれを選ぶのが無難でしょう。ハードウェアエンコードという方式です。
説明 | |
x264/AOM AV1/SVT-AV1 | ・画質はよいが、負荷が重い ・ソフトウェアエンコーダー ・CPUエンコードともいう |
それ以外 | ・画質は落ちるが、負荷が軽い ・ハードウェアエンコーダー(HW) ・GPUエンコードともいう |
従来からの一般論としては、ハードウェアエンコードはソフトウェアエンコードよりも負荷が軽く、その反面で画質は劣るという傾向があります。
しかし、とくに重いPCゲームを録画する場合、負荷が問題となってカクつくことがあるため、OBS使用時はハードウェアエンコードが近年の主流となっています。
「配信エンコーダを使用」は?
ライブ配信をせず、録画目的のみでOBSを使用するなら、「配信エンコーダを使用」は選ばないようにしましょう。
なぜなら、これはライブ配信・録画を同時に行う人向けの設定だからです。録画のみを行うのであれば、選ぶ必要性がありません。
決定的に重要な「レート制御」
ビットレートで画質が決まる
高画質な動画にしたいなら、「レート制御」の設定が最重要だと思ってください。これはビットレートの制御方法についての設定です。
ビットレートという用語は、どこかで聞いたことがあるかもしれません。録画した動画を再生したとき、ビットレートが高いほど映像が荒くなりづらくなり、低いほど荒い映像になりやすくなります。
▲出典 : 『スーパーマリオ オデッセイ』(任天堂)より
▲低ビットレートで録画すると、まるでモザイクのように荒い映像になります。
単位はbps(bits per second、ビーピーエス)で表します。
- 1Mbps(メガビーピーエス) = 1,000kbps(キロビーピーエス)
- 10Mbps = 10,000kbps
高画質 = ファイルサイズ大
ビットレートを高くしたほうが高画質な動画になる、ということがわかりました。
しかし、注意点がひとつあります。ビットレートが高いほどファイルサイズが大きくなってしまうのです。ファイルサイズが大きいということは、ストレージ(HDD/SSD)の空き容量が大幅に減るということです。
ビットレートを低くすればファイルサイズは小さくなりますが(ストレージ容量を節約できる)、今度は画質が悪くなります。
したがって、録画するさいの設定は画質・ファイルサイズの両方を考えておくことが重要になるので覚えておきましょう。
「映像エンコーダ」によって設定が違う
では、「レート制御」はどのような設定にすればよいのでしょうか。
そのまえに注意したいのですが、「レート制御」で表示される選択肢は上述の「映像エンコーダ」で選んだものによって異なります。
たとえば、「映像エンコーダ」を「NVIDIA NVENC H.264」にした場合、「レート制御」では「CQP」や「無損失」が選択肢として表示されます。
しかし、「映像エンコーダ」を「x264」にした場合、「CQP」も「無損失」も「レート制御」の選択肢として表示されません。
したがって、あらかじめ「映像エンコーダ」の設定を意識しておく必要があります。「映像エンコーダ」と「レート制御」の設定はセットで考えます。
具体的な設定例
ここでは「レート制御」の設定例について見ていきましょう。全パターンは網羅できないので、2パターンだけまとめました。
NVENC H.264の場合
「映像エンコーダ」を「NVIDIA NVENC H.264」にした場合、「レート制御」は「CQP」がおすすめです。NVIDIA公式ガイドでも推奨されています。
▲CQPはConstant Quantization Parameterの略で、日本語では固定量子化パラメーター、固定量子化量という意味になります。
一見難しそうな用語ですが、「CQレベル」に任意の数字を入れるだけのシンプル設定です。2点覚えておいてください。
- 数字が小さいほど高画質(ビットレートが高くなる、ファイルサイズ大)
- 数字が大きいほど低画質(ビットレートが低くなる、ファイルサイズ小)
よくわからない場合は、20を基準にして録画してみましょう(おすすめ)。画質・ファイルサイズに満足できなかったときは、必要に応じて数字を変更し、再度録画します。
「レート制御」は「VBR」でもよいのですが、「ビットレート」(目標となるビットレート)と「最大ビットレート」(上限となるビットレート)の設定が難しいかもしれません。
▲NVIDIA公式ガイドに基づく「VBR」選択時の設定例。VBRはVariable Bitrateの略で、可変ビットレートともいいます。
最初のうちは、「無損失」は選ばないようにしましょう。ファイルサイズが超巨大になるうえに、動画編集ソフトでの読み込みや、動画サイトへのアップロードで支障が出ます。中・上級者用の設定だと思ってください。
x264の場合
「映像エンコーダ」を「x264」にした場合は、品質を指定して録画するタイプの「CRF」がおすすめです。
▲CRFはConstant Rate Factorの略で、「固定品質」と表記されることが多いです。
「CRF」の設定方法は、上述の「CQP」と似ています。高画質にしたいなら、品質となる数字を小さくしてください。20~23が使いやすい設定です。
- 数字が小さいほど高画質(ビットレートが高くなる、ファイルサイズ大)
- 数字が大きいほど低画質(ビットレートが低くなる、ファイルサイズ小)
「CRF」以外の設定については、下表をご覧ください。「CRF」とは異なり、ビットレートを自分で設定する必要があります。
説明 | |
CBR | ・固定ビットレート、Constant Bitrate ・ビットレートが一定 ・動きが少ない映像だとムダに高いビットレートを割り当てることも |
VBR | ・可変ビットレート、Variable Bitrate ・ビットレートが変動する ・映像に合わせて必要なビットレートを割り当てるため合理的 ・OBSでは「ビットレート」と「CRF」の2つを設定する必要あり |
ABR | ・平均ビットレート、Average Bitrate ・指定したビットレートが動画全体の平均値になる設定 ・VBRの一種 |
設定まとめ画像
最後に、設定例を画像でまとめておきます。繰り返しますが、あくまでも設定例です。これと異なる設定でも問題ありません。
「映像」タブ
- 基本 (キャンバス) 解像度 : 1920x1080
- 出力 (スケーリング) 解像度 : 1920x1080
- FPS共通値 : 60
「出力」タブ
- 映像エンコーダ : NVIDIA NVENC H.264
- 出力をリスケールする : OFF
- レート制御 : CQP
- CQレベル : 20
- キーフレーム間隔 : 0
- プリセット : Quality
- プロファイル : high
- Look-ahead : OFF
- 心理視覚チューニング : ON
- GPU : 0
- 最大Bフレーム : 2
上記設定項目は、基本的に「映像エンコーダ」で「NVIDIA NVENC H.264」を選んだ場合を想定しています。
もし設定項目の意味を知りたい場合は、下記ページをご覧ください。
YouTube、Xでは画質が下がる
もし高画質に録画できたとしても、このあとの段階で画質が落ちる可能性があります。
PCに保存しておくだけなら問題はありません。しかし、動画をYouTubeやX(旧Twitter)などにアップロードすると、どうしても画質は低下します。
これは、YouTubeやTwitterが動画の画質を落とす作業をするためです(再エンコード)。ユーザー側で再エンコードを回避する方法はありません。
まとめ
OBSの場合、画質設定で重要なのは「レート制御」です。この部分の設定を理解できれば高画質録画は簡単です。
- CQP、CRF → 数字が小さいほど高画質
- CBR、VBR、ABR → 数字が大きいほど高画質
しかし、画質を維持しながらファイルサイズを抑える設定については試行錯誤が必要になるでしょう。
今回は触れませんでしたが、H.265/HEVCという規格について調べるのもよいかもしれません。
OBSにはさまざまな便利機能があります。下記記事も併せてご覧ください。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。