OBS Studio(以下OBS)でBluetoothヘッドセットを使う場合、音のトラブルに注意してください。
たとえば、「OBS起動中だけイヤホンから音が聞こえない、OBSを閉じたら音が出る」といった経験はないでしょうか。
その原因は、Bluetoothの仕様にあります。
Windows PCの使用を前提とした解説です。
目次
今回使った製品
今回筆者が使用したBluetoothヘッドセットは、Amazonで購入した片耳ヘッドセットです。
このヘッドセットを、「Prestige-15-A10SC-026JP」というノートPCにBluetooth接続しました。
端的にどうなる?
OBSでBluetoothヘッドセットを使った場合、具体的にどのようになるのでしょうか。
この設定はダメ
かりに、OBSの設定を以下のようにしたとします。
- 「設定」→「音声」→「デスクトップ音声」を「既定」
- 「設定」→「音声」→「マイク音声」を「ヘッドセット (Q5 Hands-Free AG Audio)」
▲製品によって表示名は多少異なりますが、共通して「Hands-Free AG Audio」という文言が入ります。
また、Windowsの再生デバイス(音を聞くのに使う機器のこと)を「ヘッドホン (Q5 Stereo)」にしたとしましょう。
▲製品によって表示名は多少異なりますが、共通して「Stereo」という文言が入ります。
音が聞こえない、入らない、出ない
この場合、あらゆる音が聞こえなくなります。試しにOBSを起動した状態で動画・音楽を再生してみてください。音が聞こえません。無音です。
かりにライブ配信したとしても、視聴者にはゲーム音・マイク音が聞こえません。録画の場合も同様です。音が入りません。
では、どうしたらよいのでしょうか。3つの対処法があります。
対処法1 : HFPに切り替える
音質は悪くなりますが、いちばん無難な方法です。手元にあるBluetoothヘッドセットを有効活用したいという人に向いているでしょう。
再生デバイスを変更するだけ
設定方法は簡単です。まず、OBSの設定は上のとおりでかまいません。
重要なのはWindows側の設定です。右下のスピーカーアイコンをクリックして、「ヘッドセット (Q5 Hands-Free AG Audio)」を選んでください。
▲ポイントは、「Hands-Free AG Audio」が入っているものを選ぶ点です。「Stereo」が入っているものを選ぶわけではありません。
最後に、必ずOBSを再起動します。OBSの再起動は忘れやすいところですが、必ず行ってください。Windows側の設定変更をOBSに反映させるためです。
設定が完了しました。今度は問題なく音が出ます。
HFPって?
いま行った設定ですが、これは「Hands-Free Profile」(通称HFP)という規格に切り替えたのです。
じつはBluetoothにはいくつかの規格(通信方式)があり、HFPはそのうちのひとつです。
説明 | |
HFP(Hands-Free Profile) | ・通話用の規格(双方向通信できる) ・低音質 ・モノラル音声 ・PCでは「Hands-Free AG Audio」が目印 |
A2DP(Advanced Audio Distribution Profile) | ・音楽再生用の規格 ・高音質 ・ステレオ音声 ・PCでは「Stereo」が目印 |
ボイスチャット用(通話用)の規格であるため音質は悪いのですが、Bluetoothのヘッドホン部とマイク部を同時に使いたいのであればHFPに切り替えましょう。
では、ヘッドホン部の音質の悪さが妥協できない場合、どうしたらよいのでしょうか。その答えが対処法2です。
対処法2 : 別マイクを使う
Bluetoothヘッドセット + 別マイク
Bluetoothヘッドセットを着用しつつ、声については別マイクを使って入れる方法です。Bluetoothヘッドセットで高音質な音を聞きたいという人に向いているでしょう。
このやり方の場合、別のマイクを用意しないといけません。たとえば、単体マイクや、ノートPC内蔵のマイクです。
設定方法ですが、まずOBSについては「設定」→「音声」→「マイク音声」で別マイクを選択してください。あくまでも別マイクです。Bluetoothヘッドセットのマイクは使いません。
そして、Windows側の設定変更です。右下のスピーカーアイコンをクリックして「ヘッドホン (Q5 Stereo)」を選びます。
▲対処法1の設定とは異なり、「Stereo」が入ったものにします。「Hands-Free AG Audio」が入っているものは選びません。
最後に、必ずOBSを再起動します。
A2DPって?
いま行ったWindowsの設定は、「Advanced Audio Distribution Profile」(通称A2DP)という規格に切り替えるためのものです。
同規格はオーディオ用であるため、ステレオで高音質再生できます。つまり、PCで音楽を聴くのに適した規格です。
しかし、最大のデメリットは、Bluetoothヘッドセットのヘッドホン部から音を出しているとき同時にマイク入力を使えないという点です。
つまり、A2DPに切り替えた場合、せっかくBluetoothヘッドセットを持っていたとしてもマイク機能は捨てるしかありません。
OBSで別マイクを使う設定にしたのはこのためです。別マイクならばA2DPでも問題ありません。
対処法3 : 別の再生デバイスを使う
Bluetoothヘッドセットのマイク部を使いつつ、別のヘッドセット(イヤホン、スピーカー)から音を出して聞く方法です。
まずはOBSの設定ですが、下図のようにしましょう。上述した「この設定はダメ」の設定と同じでかまいません。
重要なのはWindows側の設定です。右下のスピーカーアイコンをクリックし、「スピーカー (Realtek Audio)」などBluetoothヘッドセット以外の再生デバイスを選んでください。
すると、たとえばPCにイヤホンを接続したのであれば、そのイヤホンから音が出るようになります。逆にBluetoothヘッドセットからは音が出なくなりますが、不具合ではありません。
最後に、必ずOBSを再起動します。
まとめ
Bluetoothヘッドセットのヘッドホン部で高音質再生しつつ(A2DP)、同時にマイク部も使えればよいのですが(HFP)、それはBluetoothの仕様上できません。
なぜなら、A2DPではBluetoothヘッドセットのマイク部を使って音声入力できず、しかもA2DPとHFPは両立できないからです。
そのため、対処法は3択になります。
- HFPに切り替える(おすすめ)
- A2DPのまま、別マイクで声を入れる
- 別の再生デバイスから音を出し、マイク部だけ使う
そもそも論になりますが、PCでの使用を前提とした場合、Bluetoothヘッドセットはゲーム実況向きの機器ではありません。今回のような問題が起こりますし、音の遅延(一定間隔の音ズレ)の問題もあります。
可能であれば、通常の有線のヘッドセット(または単体マイク)を買いましょう。
もし音の問題が起きている場合は、下記ページも併せてご覧ください。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。