ライブ配信における音ズレは、解决が困難なトラブルのひとつです。
OBS Studio(以下OBS)使用者のなかにも、音ズレで悩んでいる人は多いかもしれません。
ここでいう音ズレとは、映像と音声のタイミングがズレて同期していない状態のことです。
- 映像が音声よりも早く表示される(音声が遅い)
- 映像が音声よりも遅く表示される(音声が早い)
最初から最後まで一定の間隔で音ズレしている場合はまだよいのですが、問題は時間が経過するに従ってだんだん音ズレがひどくなっていくタイプです。
ひょっとしたら一生解决できないかもしれません。この記事を読んでも時間をムダにする可能性があります。
目次
フレームレートを変更する
OBSのフレームレートを、モニターのリフレッシュレートに合わせて変更します。
モニターの現在のリフレッシュレートを調べてみましょう。モニターにもよりますが、通常は60Hz(ヘルツ)になっているはずです。
- デスクトップ画面の適当な箇所で右クリックする。
- 「ディスプレイ設定」をクリックする。
- 下部にある「ディスプレイの詳細設定」をクリックする。
- 「ディスプレイ 1のアダプターのプロパティを表示します」をクリックする。
- 「モニター」タブを開く。
- 「画面のリフレッシュレート」を確認する。
OBSのほうもこれに合わせて設定します。
- 「設定」→「映像」の順にクリックする。
- 「FPS 共通値」を「60」、または「30」にする(よくわからないなら後者)。
- 「OK」をクリックする。
少し注意が必要なのは、ハイリフレッシュレート(例 : 144Hz)のゲーミングモニターを使用しているケースです。
高いリフレッシュレートのままでもよいのですが、念のため60Hzに制限したうえで配信してみてください。上述した「画面のリフレッシュレート」で設定できます。
コマ落ちを減らす
上の話とも関係するのですが、配信中、動きがカクカクした(カクつく)ことはないでしょうか。
これをコマ落ちといい、音声とのタイミングがズレる原因になることがあります。
そこで、コマ落ちを減らす設定にしましょう。
- ゲーム側のグラフィック設定を下げる
- OBS側の設定を変更する
- その他、各種設定を変更する
必ずしもPCのスペックが原因でカクつくわけではありません。高スペックなPCでもコマ落ちすることはあります。
詳細は、下記ページをご覧ください。
サンプリングレートを合わせる
まず、「設定」→「音声」の順にクリックし、「サンプリングレート」の部分を見てください。
ここは、初期設定が48kHz(キロヘルツ)になっています。そこで、Windows側のサウンド設定もすべて48kHzで統一します。
以下のようにして、再生デバイスのサンプリングレートを48kHzに設定しましょう。
- Windowsキーを押しながらRキーを押す。
- 表示されたウィンドウに「mmsys.cpl」と入力し、「OK」をクリックする。
- 「再生」タブを開く。
- 緑色のチェックマークが入っているデバイスを探す(既定のデバイス)。
- それをダブルクリックする。
- 「詳細」タブを開く。
- 「既定の形式」を「2チャンネル、16ビット、48000Hz(DVDの音質)」にする。
- 「OK」をクリックする。
また、配信で使用するマイクについても同じく48kHzにします。
- さきほどの設定画面で「録音」タブを開く(「再生」タブの隣)。
- 使用するマイクをダブルクリックする。
- 「詳細」タブを開く。
- 「既定の形式」を「2チャンネル、16ビット、48000Hz(DVDの音質)」にする。
- 「OK」をクリックする。
タイムスタンプを使用しない
OBSの「音声ミキサー」の部分に、「デスクトップ音声」があります。ここにある歯車アイコンから「プロパティ」をクリックします。
すると、デスクトップ音声の設定画面が開きます。「デバイスのタイムスタンプを使用」のチェックを外してください。
通常、タイムスタンプは初期設定どおりONでよいのですが、あえて外してどうなるか検証します。
同期オフセットを調整する
音ズレの間隔が一定の場合にかぎり有効な方法です。だんだんひどくなるタイプの音ズレには効果がありません。
音声ミキサー」にある歯車アイコンをクリックして、「オーディオの詳細プロパティ」を開きます。
▲ここに歯車アイコンがない場合は、上部メニューバー「編集」→「オーディオの詳細プロパティ」でも開けます。OBSのバージョンを28.0以上にすれば同アイコンが表示されます。
設定画面に「同期オフセット」があります。任意の数値を入力しましょう。マイナス値にもできます。正解はありません。細かく調整してください。
たとえば、マイク音声をBGMよりも0.1秒遅らせたいのであれば、「マイク」の「同期オフセット」を「100 ms」にします。1秒遅らせたいなら「1000 ms」です。
- 1ms(ミリセカンド) = 0.001秒
- 10ms = 0.01秒
- 100ms = 0.1秒
- 1,000ms = 1秒
調整には手間がかかるかもしれません。自分ひとりでやるのであれば、ひたすらOBSで録画を繰り返し、動画を再生して確認しましょう。
PCまたはOBSを再起動する
筆者の経験上、地味に効果があるのがPCの再起動です。再起動は手間という人もいますが、思いきってやってください。
念のため、シャットダウンではなく再起動を推奨します。
- 「スタート」ボタンをクリックする。
- 電源のアイコンをクリックする。
- 「再起動」をクリックする。
Windowsの設定(高速スタートアップ)にもよりますが、トラブルが起きたときは再起動のほうがより確実です。
OBSの再起動で音ズレが直ることもあるかもしれません。
キャプチャーボード使用時
一般的な部分を確認する
Switchなどのゲーム配信用にキャプチャーボードを使用している場合、まずは上に書いた方法を試します。
そのうえで以下の点を見直します。
「音声のみをキャプチャ」にする
OBSの設定を以下のように変更してみましょう。
- 「映像キャプチャデバイス」をダブルクリックする。
- 「音声出力モード」を「音声のみをキャプチャ」にする。
- 「OK」をクリックする。
▲一部のキャプチャーボードではここが「デスクトップ音声出力」だと盛大に音ズレします。
「音声のみをキャプチャ」にした場合、自分にはPCから出ているゲーム音が聞こえません(視聴者には聞こえる)。
もしゲーム音をPCで聞きたい場合は、以下のように設定します。
- 「音声ミキサー」の歯車アイコンをクリックする(または「編集」→「オーディオの詳細プロパティ」)。
- 「オーディオの詳細プロパティ」が開く。
- 「映像キャプチャデバイス」の「音声モニタリング」で「モニターのみ(出力はミュート)」を選択する。
なお、パススルー出力している場合は、上記モニタリングの設定を変更せずとも出力先のTVでゲーム音を聞けます。
AVerMedia Engineを入れる
AVerMediaの下記製品を使用していないでしょうか。
- GC553
- AVT-C878/AVT-C878 PLUS
- C988
いずれも古い製品です。
もし該当するのであれば、プラグインの「AVerMedia Engine」をインストールしましょう。メーカーの公式サイトで無料ダウンロードできます。
▲AVerMedia Engineを入れることで、OBSで同プラグインを選択できるようになります。
そのうえでOBS側で設定を変更します。やり方については、下記ページをご覧ください。
「音声入力キャプチャ」を追加する
設定が複雑になるのでお勧めしませんが、ソースの「音声入力キャプチャ」を使用することで音ズレが直るかもしれません。
この設定はあくまでも一例です。
- 「映像キャプチャデバイス」をダブルクリックする。
- 「カスタム音声デバイスを使用する」にチェックが入っている場合は、チェックを外す(あくまでも外す)。
- 「OK」をクリックする。
- 「ソース」の「+」をクリックし、「音声入力キャプチャ」を追加する。
- 「デバイス」で「デジタル オーディオ インターフェイス」を選択する(表示名はキャプボによって微妙に違う)。
- 「OK」をクリックする。
ポイントは2番めと5番めです。自分にゲーム音が聞こえなくなるかもしれませんが、以下のように設定すれば対処できます。
- 「音声ミキサー」の歯車アイコンをクリックする(または「編集」→「オーディオの詳細プロパティ」)。
- 「音声入力キャプチャ」の「音声モニタリング」で「モニターのみ(出力はミュート)」を選択する。
パススルー出力の場合
パススルー出力している場合、ゲーム音はPCではなくTVから出ているものを聞きましょう。
なぜなら、PCから出ているゲーム音はキャプチャーボードの影響で遅延しているからです。
この状態でTVに映っているゲーム画面を見ながらプレイすると、ゲーム音が遅れて聞こえてくるため一種の音ズレのような状態になります。
それでも直らないときは
どれが原因?
残念ですが、「まったく音ズレが直らなかった、どうしよう」という人もいるでしょう。じゅうぶんありうることです。
音ズレの原因になっているものは、私たちが想像する以上に多岐にわたります。
とくに、ゲーム実況ではさまざまなハードウェア・ソフトウェアを使いますから、音ズレの原因を特定するのは容易ではありません。
問題の切り分けを行う
そこで、可能なかぎり最小状態にして問題の切り分けを行う必要があります。以下のものは使用をいったん中断してください(取り外す、選択しない)。
- フィルター、プラグイン(例 : NDIプラグイン)
- 仮想オーディオデバイス(例 : Voice Meeter Banana、VB-CABLE)
- キャプチャーボード
- USBヘッドセット(USBマイク)
- Bluetoothヘッドセット
- オーディオインターフェイス、ミキサー
- USBハブ
そして、最小状態で音ズレが発生するか検証しましょう。
- 音ズレしなくなった → 上記のいずれかが音ズレに関係
- 音ズレする → 別のものが原因
たとえば、なんらかの音声プラグインを使っているときだけ音ズレするなら、それは同プラグインとの関係で問題が起きているとわかります。
やはり解决は難しい
意外なものが音ズレの原因になっていることがあります。
- バックグラウンドで動いている特定のソフトウェア(ユーティリティ)
- オーバークロック
- Windowsの省電力設定
なにが原因になっているか想像もつきません。かなりつらい作業になるはずです。
まとめ
一瞬で音ズレを直す方法があればよいのですが、残念ながらそのような方法は存在しません。音ズレの直し方を完全網羅している解説サイト・動画もありません。
重要なのは、どのような状態であれば音ズレが発生しないのか見つけることです。ここがわかれば解决の突破口になります。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。