OBS Studio(以下OBS)を使用していると、音声を分けたいというケースがあるかもしれません。
たとえば、以下のようなケースです。
- 複数のアプリの音を分けたい
- ゲーム音・マイク音を分けたい
設定方法は複雑になりますが、OBSでやる方法について見ていきましょう。
Windows PCの使用を前提にしています。
目次
【重要】目的を確認しよう
デスクトップ音声を分けて録画
今回想定しているのは、録画目的でOBSを使用する場合です。
そして、そのうえで複数のアプリの音(デスクトップ音声)を分けて動画に入れたいというケースを前提としています。
たとえば、PCゲームの音・Discordの通話相手の声を分けて録画し、それぞれの音声を別々に編集したいというケースがこれに該当します。
ゲーム音・マイク音だけ分けたい → 別ページで
もしゲーム音・マイク音(自分の声)の2つを分けて録画したいだけという場合は、下記ページにやり方をまとめました。
ライブ配信は? → 別ページで
また、ライブ配信で音声を分けたい場合については、下記ページをご覧ください。不要な音を入れず、ゲーム音だけをライブ配信で流せます。
トラブル回避のために確認しよう
28.0以降を使用
この記事の解説では、OBSのバージョンが28.0以降であることを前提にしています。
同バージョンで搭載された新機能、「アプリケーション音声キャプチャ」を使うためです。28.0未満であってもプラグインで同じことができますが、今回は割愛します。
問題なく録画できるか
これから設定していくまえに、問題なく録画できていることを確認しましょう。具体的には2点です。
- デスクトップ音声(例 : PCゲーム音)が入っていること
- マイク音が入っていること
なぜかというと、記事のとおりにOBSの設定を行っているにもかかわらず、あとで動画を再生・編集するときになって音が聞こえないことがあり(後述)、問題の切り分けをしやすくしておく必要があるからです。
もし記事を読むまえの段階で音声トラブルを抱えている場合は、下記ページをご覧ください。
難度は高め
設定は難しく感じるかもしれません。複数箇所の設定を行う必要があるうえに、初心者がつまずきやすい部分が数多く存在します。用語も難解です。
もしOBSに慣れていないなら、この記事に書いてある設定方法は推奨しません。また、動画編集を経験したことがない場合も厳しいものがあります。
設定の流れ
設定の大まかな流れは4段階です。
- デスクトップ音声を無効にする。
- ソースとして「アプリケーション音声キャプチャ」を2回追加する。
- 音声トラックの設定を行う。
- 録画する。
難しいのが3番めです。順番に見ていきましょう。
デスクトップ音声を無効にする
まず前提として、「設定」→「音声」の「デスクトップ音声」を「無効」にします。
または初期設定の「既定」のままでもかまいませんが、その場合は「音声ミキサー」の「デスクトップ音声」をミュートにします。
どちらのやり方でもかまいません。どちらにすべきか迷った場合は、最初に書いた方法にしておきましょう。そのほうがより確実です。
なぜデスクトップ音声の設定変更が必要かというと、デスクトップ音声が有効のままだと音が二重になって金属音のように聞こえたり、配信に乗せたくない音が乗る場合があるからです。
「設定」→「音声」でデスクトップ音声を無効にした場合、「音声ミキサー」から「デスクトップ音声」の表示が消えます。しかし、問題ありません。正常です。
ソースを2回追加する
まず、動画に入れたい音を設定していきます。今回は例として、PCゲームの音を入れる設定を行います。
- PCゲームを起動しておく。
- 「ソース」の「+」から「アプリケーション音声キャプチャ」を追加する。
- わかりやすい名前にする(例 : 「ゲーム音」)。
- 「OK」をクリックする。
- 「ウィンドウ」の部分でPCゲームを選択する。
そして、再度「アプリケーション音声キャプチャ」を追加しましょう。今回は、Discordの通話相手の声を入れるものと仮定します。
- Discordを起動しておく。
- 「ソース」の「+」から「アプリケーション音声キャプチャ」を追加する(2回め)。
- わかりやすい名前にする(例 : 「通話相手の声」)。
- 「OK」をクリックする。
- 「ウィンドウ」の部分でDiscordを選択する。
今回はPCゲーム・Discordを例にしましたが、自分が動画に入れたいアプリの音を「ウィンドウ」で選択してください。
複数の音声トラックを作成する
音声トラックとは
「アプリケーション音声キャプチャ」の追加と同じくらい重要なのが、音声トラックの設定です。
音声トラックとは、複数の音声を動画に入れるための領域のことをさしています。「領域」といっても目には見えません。
音声トラックの設定を行うことで、録画後の動画編集時にゲーム音・通話相手の声・自分の声を分けて編集できるようになります。
- 個別に音量調整する(大きく or 小さく)
- 個別に音量をミュートにする
- 個別にエフェクトをかける
このように複数の領域を作る設定のことをマルチトラックといいます。
OBSの設定
OBSで以下のように設定しましょう。
- 「設定」→「出力」の順にクリックする。
- 「出力モード」を「詳細」にする。
- 「録画」タブを開く。
- 「録画フォーマット」を「Fragmented MP4 (.mp4)」または「Hybrid MP4 (.mp4)」にする。
- 「音声トラック」の部分で、「1」「2」「3」の3つにチェックを入れる。
- 「OK」をクリックする。
注意点が多いのですが、まず「録画フォーマット」が「Flash Video (.flv)」だとマルチトラックにできません。それ以外にする必要があります。
また、「音声トラック」の部分で「1」のみを選択した場合も、マルチトラックにできません。必ず複数のトラックを選択してください。
たとえば、「1」「2」「3」を選択することで3個の音声トラックを作成できます。自分が動画に入れたい音声の数だけ選択してください。
- PCゲームの音 - 1個め
- 通話相手の声 - 2個め
- 自分の声 - 3個め
各トラックに入れる音声を選択する
具体例
複数の音声トラックを作る設定ができました。つぎは、どのトラックにどの音声を入れるのかという設定を行います。
たとえば、以下のようにするとしましょう。
- トラック1 : PCゲームの音を入れたい
- トラック2 : 通話相手の声を入れたい
- トラック3 : 自分の声を入れたい
オーディオの詳細プロパティ
「オーディオの詳細プロパティ」を開きます。
トラックの設定
そして、どのトラックにどの音声を入れるのか設定していきます。
- 「ゲーム音」のトラック「1」のみにチェックを入れる。
- 「通話相手の声」のトラック「2」のみにチェックを入れる。
- 「マイク」のトラック「3」のみにチェックを入れる。
- 設定画面を閉じる。
▲ひとつの音声につき1個のトラックを割り当てました(青色の部分)。よけいなチェックは外します。
このように設定することで、PCゲーム音はトラック1に入り、通話相手の声はトラック2に入るようになりました。自分の声はトラック3に入ります。
基本的には、ひとつの音声につき1個のトラックを割り当てる設定にします。
たとえば、「ゲーム音」の部分ではトラック「1」のみにチェックを入れます。「1」および「2」の両方には入れません。今回は、ひとつの音声はひとつのトラックにのみ入れるという設定にしています。
ただ、このあたりは上述したトラック数との関連で自由に決めてもかまいません。
一例ですが、トラックを4個作る設定にします。「設定」→「出力」→「録画」→「音声トラック」の部分です。
そして、トラック「1」にすべての音声を入れて、トラック「2」にはPCゲーム音、トラック「3」には通話相手の声、トラック「4」には自分の声、という設定にもできます。
録画・編集する
音が聞こえない?
あとは通常どおり録画しましょう。「録画開始」ボタンをクリックし、マイクに向かって声を入れながらゲームをプレイします。
ただ、録画停止後に最大の難関が待ち受けています。動画を再生してもすべての音が聞こえるとは限りません。
編集ソフトに注意
しかし、これは不具合ではありません。
マルチトラックオーディオの読み込みに対応した動画編集ソフトを使えば、きちんとすべての音が再生されます。
▲動画編集ソフトのPremiere Proは対応しています。
詳細については、下記ページにまとめました。対応ソフトを使うことで各音声を別々に音声編集できます。
まとめ
デスクトップ音声を分けて録画する設定は、とても複雑です。
ポイントを抑えておきましょう。
- トラックの設定をするまえに、問題なく録画・録音できていることを確認する
- デスクトップ音声は無効にする
- 「アプリケーション音声キャプチャ」は2回追加する
- マルチトラックの設定を適切に行う
- 使用する動画編集ソフトに注意する
OBSの使い方については、下記ページもご覧ください。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。