バージョン28.0以降のOBS Studio(以下OBS)では、特定の音だけを配信に乗せる機能が搭載されています。
たとえば、ライブ配信でPCゲームをプレイしつつ、Discordの通話相手の声は入れない(ゲーム音だけ入れる)、というようなことが可能です。
- PCゲームの音 : 配信に乗せる
- それ以外の音 : 配信に乗せない
以前までは「win-capture-audio」というプラグインが必要でした。しかし、OBSのバージョンが28.0以降であればプラグインなしでできます。

使い方は驚くほど簡単です。
OBSのバージョンが28.0以上、かつWindows PCであることを前提にしています。
便宜上、ライブ配信を前提にしていますが、録画する場合も設定方法は同じです。
目次
具体的にどんなことができる?
ライブ配信しているとしましょう。「いま自分が聞いている音を配信に乗せたくない」と思ったことはないでしょうか。
以下のような音を視聴者に聞かれたくないというケースです。
- YouTube、Amazonプライム・ビデオ、Netflixなど、動画の音声
- 音楽
- Discordの通話相手の声
- 棒読みちゃんの読み上げ音声
- Windowsのシステム音(例 : 「ポーン」という音)
たとえば、Discordで仲間と会話しつつPCゲーム配信をやりたいのですが、仲間の声を配信で流したくありません。
あるいは、Amazonプライム・ビデオでアニメを視聴しつつ、棒読みちゃんの音声は配信で流したいのですが、アニメの音を配信で流すわけにはいきません。
このようなときは、バージョン28.0で搭載された新機能、「アプリケーション音声キャプチャ」の出番です。配信に乗せるアプリの音を指定できます。
もちろん、視聴者に聞こえていないだけで、配信者自身にはいつもどおり音が聞こえます。この点は心配いりません。
デスクトップ音声を無効にする
「設定」→「音声」から
まず、「設定」→「音声」の「デスクトップ音声」を「無効」にします。
または、初期設定の「既定」のままでもかまいませんが、その場合は「音声ミキサー」の「デスクトップ音声」をミュートにします。
どちらのやり方でもかまいません。どちらにすべきか迷った場合は、最初に書いた方法にしておきましょう。そのほうが確実です。
なぜデスクトップ音声の設定変更が必要かというと、デスクトップ音声が有効のままだと音が二重になって金属音のように聞こえたり、配信に乗せたくない音が乗る場合があるからです。
備考
「設定」→「音声」でデスクトップ音声を無効にすると、「音声ミキサー」から「デスクトップ音声」の表示が消えます。しかし、問題ありません。正常です。
マイク音声(自分の声)も入れたい場合は、「設定」→「音声」→「マイク音声」でマイクを選択してください。ここはいつもどおりです。
もちろん、「設定」→「音声」→「マイク音声」を「無効」にしつつ、シーンのほうに「音声入力キャプチャ」を追加する方法でもかまいません。

ソースから追加する
まず、「ソース」の「+」から「アプリケーション音声キャプチャ」をクリックします。
わかりやすい名前にして(例 : 「ゲーム音」など)、「OK」をクリックします。今回は便宜上、「アプリケーション音声キャプチャ」と呼ぶことにします。
すると設定画面が開きました。どの音を配信に乗せるのか、この設定画面で決めていきます。
どの音を乗せるか決める
「ウィンドウ」で選ぶ
「ウィンドウ」の部分で任意のアプリを選択しましょう。ここで選択したアプリの音が取り込まれ、配信に乗ります。
逆に、選択していないアプリの音は配信に乗りません。
- 「ウィンドウ」で選択したアプリ → 乗る
- それ以外のアプリ → 乗らない
最後に「OK」をクリックして完了です。
アプリが選べない
目的のアプリが「ウィンドウ」の部分で選べない、表示されない場合は、以下のようにしてください。
- 目的のアプリを起動していることを確認する。
- いったん「キャンセル」をクリックする。
- 「アプリケーション音声キャプチャ」をダブルクリックする(設定画面を開く)。
- 「ウィンドウ」でアプリを選ぶ。
複数の音を乗せることも
では、ほかにも配信に乗せたい音が複数ある場合、どうしたらよいのでしょうか。
たとえば、PCゲームの音に加えて、棒読みちゃんの読み上げ音声も配信に乗せたい、という場合です。
- PCゲームの音 : 乗せたい
- 棒読みちゃんの音 : 乗せたい
- それ以外の音 : 乗せたくない
この場合、ソースとして再度「アプリケーション音声キャプチャ」を追加しましょう。つまり、同じソースを2回追加することになります。
そして、「ウィンドウ」で別アプリを選択してください。棒読みちゃんであれば、「[BouyomiChan.exe]: 棒読みちゃん」を選んで「OK」をクリックします。
すると、「ソース」一覧に「アプリケーション音声キャプチャ」が2個並びました。これで2個のアプリの音声を取り込めます。
ソース名を変更したい場合は、右クリック→「名前を変更」、またはF2キーを押します。
成功?レベルメーターを確認
狙いどおりに設定できたかどうか、「アプリケーション音声キャプチャ」のレベルメーターを見て確認しましょう。
やり方ですが、もし配信に乗せたい音を現在再生しているのであれば、テストのためいったん止めます。以下のどの方法でもかまいません。
- 音を再生しているアプリを閉じる
- 音を一時停止する
- 音量ミキサーを開き、音を再生しているアプリをミュートにする
そして、今度は配信に乗せたくない音を再生してみてください。「アプリケーション音声キャプチャ」のレベルメーターが無反応であれば、その音は配信に乗りません。成功です。
他方、「アプリケーション音声キャプチャ」のレベルメーターが動いているなら、基本的にその音は配信に乗ります。
したがって、配信に乗せたくない音がある場合は、試しにその音だけを再生してみます。そして、レベルメーターが動いていないことを確認してください。
乗せられない音がある?
具体例
さきほどデスクトップ音声を無効にしました。
このとき問題になるのが、配信に乗せたいのに乗せられないデスクトップ音声がある、という点です。
設定にもよりますが、以下のようなケースです。
- キャプチャーボードを使用していて、かつパススルー出力などの遅延対策をしていない
- 「メディアソース」を追加している
- 「ブラウザ」を追加している(例 : Streamlabsの通知音)
これらの音がデスクトップ音声として扱われている場合、配信に乗せるには「アプリケーション音声キャプチャ」を追加したあと、「ウィンドウ」でOBS自身を選ぶ必要があります。
しかし、バージョン28.0.1の段階では、まだ「ウィンドウ」でOBS自身を選べません。そうすると、配信に乗せたいのに乗せられない音が出てくるわけです。
対処法
以下のような対処法があります。
- 「音声ミキサー」の歯車アイコンをクリックする。
- 「オーディオの詳細プロパティ」が開く。
- 音を流したいソース(例 : 「映像キャプチャデバイス」)の「音声モニタリング」を「モニターと出力」にする。
- 今回は特別な設定のため、「モニターのみ (出力はミュート)」を選ばない点に注意。
▲「オーディオの詳細プロパティ」を開きます。
そのうえで、キャプチャーボードを使用している場合にかぎり以下のように設定してください。
- ソースの「映像キャプチャデバイス」をダブルクリックする(「映像キャプチャデバイス」を追加していることが前提)。
- 「音声出力モード」を「音声のみをキャプチャ」にする。
- 「OK」をクリックする。
また、「ブラウザ」を追加している場合にかぎり以下のように設定します。
- ソースの「ブラウザ」をダブルクリックする。
- 「OBSで音声を制御する」をONにする。
- 「OK」をクリックする。
とくに「音声モニタリング」の設定が重要です。今回はデスクトップ音声を無効にしているため、「モニターのみ (出力はミュート)」だと上記のような音を流せないケースが出てきます。
通常、「モニターと出力」を選ぶ機会は少ないのですが、今回はやむをえず特別な設定となります。

もしここまでの話が意味不明という場合は、問題の切り分けのため「アプリケーション音声キャプチャ」をソースからいったん削除してください。
ゲーム音が出ない場合の対処法については、下記ページでも解説しています。


ちょっとした応用
少し余談になりますが、「アプリケーション音声キャプチャ」でおもしろい使い方もできます。
別々に音量調整
「アプリケーション音声キャプチャ」を使うと、複数のアプリのデスクトップ音声を分けてOBSで音量調整できます。
たとえば、(1)PCゲームの音と、(2)Discordの通話相手の声は両方ともデスクトップ音声です。
それぞれをOBSで音量調整したい場合は、以下のようにしましょう。
- 「アプリケーション音声キャプチャ」を追加し、PCゲームを選択する。
- 再度「アプリケーション音声キャプチャ」を追加し、Discordを選択する。
- それぞれの音量を「音声ミキサー」の部分で調整する。
このようにすることで、配信者自信が聞いている音量は変更せずに、(1)PCゲームの音と、(2)Discordの通話相手の声の音量を、別々にOBSで調整できます。
音をトラック分け(録画)
ライブ配信用ではなく録画用になりますが、複数のアプリのデスクトップ音声を動画内で分けて録音することもできます。
たとえば、録画後の動画編集で、(1)PCゲームの音と、(2)Discordの通話相手の声を別々に音声編集したいとき、「アプリケーション音声キャプチャ」を2回追加しましょう。
そのうえで、音声トラックの設定も併せてOBSで行う必要があります。「アプリケーション音声キャプチャ」だけではできません。
詳細については、下記ページをご覧ください。

コメント
デスクトップ音声は録音できるのですが、アプリケーション別にすると音を認識してくれません。
様々な種類のアプリで試しましたが、どれも同じです。