OBS Studio(以下OBS)を使ってYouTube配信する場合、画質が悪い、超高画質にしたいという人が多いはずです。
一般論としてはビットレートの設定を高くすればよいのですが、今回は違う観点から高画質配信するためのポイントを見ていきましょう。
ポイントは2つです。
- 「映像エンコーダ」の設定(「設定」→「出力」)
- 「出力 (スケーリング) 解像度」の設定(「設定」→「映像」)
大半の人は、今回紹介するような画質設定にはしていないはずです。そういった意味ではマイナーな設定かもしれません。
しかし、効果は絶大です。
画質の比較画像も掲載しています。
本記事は、2024年9月時点で筆者が検証した範囲内での話です。将来的にはYouTubeの仕様が変わる可能性があります。
関連【YouTube Live】OBSを使ってゲーム配信するための設定方法
目次
基礎となる設定について
まず、前提としてビットレートを盛れば高画質になります。
幸いなことに、YouTubeでのライブ配信はビットレートの上限が51Mbpsとなっています。
そのため、自宅の上り速度さえ問題なければ、あれこれ設定を考えずとも画質を上げるのは容易です。
しかし、それは当然すぎる話でしょう。
そこで今回は、ビットーレートが10Mbps(CBR)であることを前提として設定していきます。
▲1Mbpsは1,000kbpsなので、10Mbpsは10,000kbpsです。
方法1-AV1にする
おすすめはNVIDIA NVENC AV1
いちばんおすすめの方法です。「映像エンコーダ」を「NVIDIA NVENC AV1」にします。ないかもしれませんが、確認してみてください。
▲「映像エンコーダ」の設定は、「設定」→「出力」で行います。「出力モード」を「詳細」にしました。
このAV1とは、Google、Apple、Amazon、Microsoft、Mosilla、Netflix、Meta、NVIDIAなどのメーカーが開発に関与している次世代コーデックの名称です。
コーデックの説明については省きますが、ひとまずは「OBSで配信したり、動画を再生するさいに使われるプログラム」と理解しておいてください。
コーデックの確認方法は簡単です。
OBSの「映像エンコーダ」の部分で映像エンコーダーの名称を見ます。そこにコーデック名が含まれています。
映像エンコーダー名 | コーデック名 |
NVIDIA NVENC AV1 | AV1 |
QuickSync AV1 | AV1 |
AMD HW AV1 | AV1 |
SVT-AV1 | AV1 |
AOM-AV1 | AV1 |
NVIDIA NVENC H.264 | H.264/AVC |
x264 | H.264/AVC |
NVIDIA NVENC HEVC | H.265/HEVC |
▲上表は一例です。PC環境によっては表示されない項目もあります。
H.264とは比較にならない画質
AV1のメリットは、現在普及しているH.264コーデックよりも高画質・高圧縮な点でしょう。
たとえば、映像ビットレートを10Mbpsで配信したとして、AV1コーデックを使ったほうが高画質になります。
▲『ソウルキャリバー 6』(バンダイナムコエンターテインメント)より
つまり、単純にコーデックをH.264からAV1に変更するだけで画質が上がるわけです。
また、H.264のときよりビットレートを減らしたとしても、同じ画質を維持できるケースもあるでしょう。
非対応のPCが多い
ただし、「NVIDIA NVENC AV1」はすべてのPCで選べるわけではありません。以下のGPUを搭載しているPC環境でのみ表示されます。
- RTX 40シリーズ
- Intel Arcシリーズ(Intel Xeシリーズ)
- Radeon RX 7000シリーズ
上記環境でも選べない場合は、OBSをバージョン29.1以上にしたうえで「設定」→「配信」→「サービス」で「YouTube - RTMPS」を選んでください。
▲「サービス」で「YouTube」が入っているものを選びます。「Twitch」などを選んでいると「NVIDIA NVENC AV1」は表示されません。ほとんどのサイトはAV1に対応していないためです。
なお、AV1コーデックを使える映像エンコーダーとして、「SVT-AV1」や「AOM-AV1」があります。
しかし、この2つはCPUエンコードといって処理が重く、カクつく可能性があります。おすすめはしません。
方法2-HEVCにする
もし「映像エンコーダ」で「NVIDIA NVENC AV1」を選べない場合は、「NVIDIA NVENC HEVC」「AMD HW H.265 (HEVC)」などにしましょう。
HEVC(H.265)は、H.264の後継規格として開発されたコーデックです。普及するはずだったのですが、特許料(ライセンス料金)の高さがネックとなっており、いまだ普及していません。
しかし、それでも画質はH.264よりはよく、AV1と画質比較されるほどよい勝負になることもあります。
▲AV1のほうが左端の光の輪郭がハッキリ出ています。ただ、厳密に比較しないとわからないレベルかもしれません。
「映像エンコーダ」で「NVIDIA NVENC HEVC」を選べるのは、RTX/GTXシリーズのみとなっています。
それでも選べない場合は、OBSをバージョン29.1以上にし、「設定」→「配信」→「サービス」で「YouTube - RTMPS」を選んでください。
方法3-1440p以上にする
解像度を大きくするだけ
「出力 (スケーリング) 解像度」を1440p(2560x1440)、または4K(3840x2160)に設定して配信する方法です。
コーデックの種類はH.264でもかまいません。しかし、AV1やHEVCであれば大きく画質が向上します。
▲AV1(1440p/60fps)のほうが鼻や口、髪の毛が鮮明です。1440pにすることでブロックノイズが減少しました。画像は『ソウルキャリバー 6』(バンダイナムコエンターテインメント)より、『ニーア オートマタ』(スクウェア・エニックス)の2B。
筆者の配信ではありませんが、こちらのアーカイブをご覧ください。AV1、10Mbps(VBR、最大15Mbps)、1440p/60fpsで配信されたものです。文句ない画質でしょう。
1440p以上の解像度で配信するメリットとして、ほかにアーカイブの画質が落ちないという点もあります(後述)。
設定方法ですが、「2560x1440」は一覧にないので手動で入力してください。「x」の部分は「×」ではなく、アルファベットの「x」です。
また、「出力」タブ→「配信」タブの「出力をリスケールする」は「無効」にしておきます。通常、この設定は使いません。
▲この設定は「出力モード」を「詳細」にすると現れます。
「超低遅延」だとカクつく
重要な注意点として、YouTubeの遅延設定は「低遅延」または「通常の遅延」にしてください。
▲OBSの右下「配信の管理」ボタンからYouTubeの遅延設定ができます。
もし「超低遅延」にしてしまうと配信がカクつきます(バッファリング)。これは1440p以上の配信が「超低遅延」非対応であるためです。
そうなると気になるのが視聴者とのコミュニケーションの取りづらさ、会話のしづらさでしょう。
最低でも映像・音声が10秒以上遅延するので、配信者が発言したとしても反応が返ってくるまで長い「間」があります。
遅延(タイムラグ)が増えるデメリットを受け入れたうえで高画質配信を取るか、悩むかもしれません。
よく言われるVP9とは?
以前は特別だった
ネットでYouTube Liveについて検索すると、「VP9で再エンコードされれば高画質になる」というような趣旨の記事を見かけることがあるかもしれません。
これはどういうことかというと、まず私たちがOBSでエンコードした映像・音声がYouTubeに出力されます。
そして、YouTubeのサーバーはOBSから受け取った映像・音声をさらにエンコードします。これを再エンコードと言います。
エンコードは画質を落としてデータ量を減らす処理です。YouTube配信では回避できません。
このとき、従来は特定の要件を満たしている場合にかぎって(例 : 1440p以上の配信)、YouTubeのサーバーはVP9というコーデックで再エンコードを行っていました。
- 要件を満たした配信 → VP9で再エンコ(高画質)
- 要件を満たしていない配信 → H.264で再エンコ
再エンコードされる以上、画質が悪くなるのは避けられないわけですが、VP9はH.264よりも高画質・高圧縮なコーデックです。
そのため、一部の配信者のあいだで「VP9で再エンコされるような設定で配信するといいぞ!」と言われるようになったのです。
参考ついに高画質AV1のライブ配信に対応したOBSベータを試してみた(外部サイト)
参考Youtube配信を高画質化するアドバイス3点(外部サイト)
参考Youtube配信でHEVC・AV1を選ぶと配信時とアーカイブの画質やコーデックはどうなる話(外部サイト)
現在はほぼVP9
しかし、2024年9月時点でYouTubeの仕様は以前と変わっています。もはやVP9で再エンコードされるのは珍しいことではなくなりました。
VP9で再エンコされるか | |
4K/60fps | ◯ |
4K/30fps | ◯ |
1440p/60fps | ◯ |
1440p/30fps | ◯ |
1080p/60fps | ◯ |
1080p/60fps(H.264) | ×(画質が悪くなる) |
1080p/60fps(H.264)(人気チャンネル) | ◯ |
1080p/30fps | ◯ |
720p/60fps | ◯ |
720p/30fps | ◯ |
▲カッコ書きで「H.264」と書いてあるものは、OBSでH.264コーデックを使った配信をさしています(例 : NVENC H.264)。カッコ書きのないものはコーデックの種類を問いません。
通常のチャンネルの場合は、H.264かつ1080p/60fpsで配信するとH.264で再エンコードされます。そのため画質的にはよくありません。
▲同じH.264の1080pでも、30fpsのほうが60fpsよりも高画質になります。
他方、同じ1080p/60fpsであってもAV1やHEVCで配信すればVP9で再エンコードされます。そのため、高画質な配信になります。従来とは異なる点です。
VP9かどうかの確認方法
では、VP9で再エンコードされているかどうかは、どのようにして確認するのでしょうか。
まず、YouTubeにアクセスしてライブ配信をリアルタイムで視聴してください。アーカイブではなく、あくまでもリアルタイムです。
つぎに、再生画面上で右クリックし、「詳細統計情報」をクリックします。
再生画面上に小さな小窓が表示されます。そこの「Codecs」の部分を見ましょう。文字どおりコーデックのことです。
「vp09」になっていれば、VP9で再エンコードされていることがわかります。
他方、「avc1」と書いてある場合は、H.264/AVCで再エンコードされているということになります。
▲1080p/60fpsで配信するとH.264で再エンコードされます。VP9で再エンコードされる場合と比較すると、画質が悪くなります。
整理すると以下のとおりです。
- vp09 → VP9で再エンコされた(成功)
- avc1 → H.264/AVCで再エンコされた(失敗)
アーカイブの画質が悪くなる件
ライブ配信終了後のアーカイブで「詳細統計情報」を見る場合は、コーデック名・画質の変化に注意してください。
なぜなら、配信中および配信直後は「vp09」と表示されていたとしても、12時間経過した時点で「avc1」に変わる可能性があるからです。
つまり、配信を終了して12時間後に画質が悪くなることがあります。
これを防ぐには、OBS側で1440p以上の解像度にして配信しましょう。設定方法については上述したとおりです。
1440p以上で配信した場合は、配信中はもちろんのこと、配信を終了して12時間経過したあとも「vp09」と表示されつづけます。
つまり、一定の要件さえ守れば配信中と比較してもアーカイブの画質は落ちません。
ただし、1440p以上にすると「超低遅延」設定が使えないという悩ましい問題があります(上述)。
備考 : 今回の比較画像の撮影手順
- NVIDIAアプリでPCゲームを録画(1080p/60fps、H.264、40Mbps)。
- その動画をOBSの「メディアソース」で読み込む。
- OBSで配信(CBR、10Mbps)。
- YouTubeは「超低遅延設定」を基本とし、1440p配信のみ「低遅延」設定にした。
- 配信中、YouTubeの再生画面をフルスクリーンにし、NVIDIAアプリで録画(1080p/60fps、H.264、40Mbps)。
- その動画をAviUtlで読み込み、クリップボードに画像をコピーした。
- Photoshopに画像をペーストし、保存(画質90、JPEG)。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。