OBS Studio(以下OBS)を使用中、配信画面がカクカクする、PCが重いというケースに遭遇したことがあるかもしれません。
どうすればこれを改善できるのでしょうか。以下の2点について見ていきます。
- 画面がカクつくのを直す方法
- PCの動作、OBSを軽くするための設定方法
まず前提として「カクカク」の定義ですが、基本的に配信画面で安定して30fps出ていない状態を想定しています。
目次
ハードウェアエンコーダーを使用する
PCの動作を軽くするための方法として、近年とくに注目されているのがPCのGPUという部分を使って配信する方法です(GPUエンコード)。
- 「設定」→「出力」の順にクリックする。
- 「出力モード」を「詳細」にする。
- その下の「配信」をクリックする(録画の場合は「録画」)。
- 「エンコーダ」を「x264」以外にする。
- 「キーフレーム間隔」を「2」にする(録画の場合は「0」)。
- 「OK」をクリックする。
「エンコーダ」の部分に表示される項目については、下表を参考にしてください。ややこしいのですが、PC環境によって表示される項目が異なります。
説明 | |
x264 | |
NVENC H.264 (new) | GPUがGTX/RTXシリーズの場合に |
QuickSync H.264 | インテル製CPUの場合に |
H264/AVC Encoder (AMD Advanced Media Framework) | AMD製CPUの場合に |
アップル VT H264 ハードウェアエンコーダ | Macの場合に |
一般論として、「x264」を選んだ場合と比較すると画質は少し落ちます。しかし、CPU負荷が大きく下がり、カクつきが改善される可能性があります。
OBSのバージョンが23.0以降で、かつグラフィックボードがRTX 20シリーズである場合は、画質劣化を気にする必要はありません(参考)。
▲出典 : NVIDIA公式サイトより
出力解像度・フレームレートを下げる
出力解像度とフレームレートの両方を下げることで、PCの負荷を軽減させます。
- 「設定」→「映像」の順にクリックする。
- 「出力 (スケーリング) 解像度」を下げる(例 : 1280x720、640x360)。
- 「縮小フィルタ」で「バイリニア」を選択する。
- 「FPS 共通値」(フレームレートのこと)を「30」(単位はfps)にする。
- 「OK」をクリックする。
解像度の設定は、数字が小さいほどPCの動作が軽くなります。たとえば、640x360は1280x720よりも軽くなるということです。
ただし、解像度が低いと映像がボヤけたり、文字が小さくなって読みづらくなることがあるでしょう。画質との関係で無難なのは1280x720です。
PCスペックに余裕がない場合は、以下の2点を意識します。
- 「出力 (スケーリング) 解像度」を1920x1080にするのは避ける
- 「FPS 共通値」を60fpsにするのは避ける
もしPCスペックに余裕があるなら、「FPS 共通値」は60fpsにしてもかまいません。そのほうが30fpsよりも滑らかに動きます。あくまでも余裕がある場合です。
「ゲーム」側のグラフィック設定を下げる
PCゲーム配信の場合、PCの動作が重くなりがちです。
▲出典 : 『Apex Legends』(Electronic Arts)より
とくに、配信しながら最新の重量級タイトルを最高画質でプレイするのは、ほとんどのPCで無謀と言ってもよいかもしれません。
重要なのは、ゲーム内のグラフィック設定を下げることです。具体的には、ゲームのオプション設定を開き、以下の設定を下げましょう。
- 画質・品質
- 解像度
- フレームレート(無制限にせず60fpsに)
▲出典 : 『フォートナイト』(Epic Games)より
画質・品質については、たとえば「最高」設定にしているなら、「高」や「中」などに落とします。あるいは、「低」にしてもよいかもしれません。
また、120Hz以上に対応するゲーミングモニターを使用し、ふだん120fps以上でプレイしている人もいると思いますが、配信時は注意が必要です。フレームレートが大きいほどPCにかかる負荷も増えるため、スペックによってはカクつく原因になります。
もし、通常の60Hz対応モニターを使用している場合は(大半のユーザー)、ゲーム側のグラフィック設定を開いて、最大フレームレートが60fpsであることを確認してください。60Hzモニターでは120fps/144fps/無制限にしても意味がありません。
重いプロセスを閉じる
Windowsで実行中のプロセスが原因でPCの動作が重くなっていることがあります。タスクマネージャーを開いてください。
- PC画面のいちばん下の空白部分にカーソルを重ねて、右クリックする。
- 「タスク マネージャー」を選択する。
- 「プロセス」タブを開く。
- 同タブが表示されていない場合は、「詳細」をクリックする。
「CPU」と書かれている部分の数字が大きいと(例 : 100%)、PCの動作が重くなり、配信画面がカクつく場合があります。
「CPU」の部分をクリックして、項目をCPU使用率が高い順に並び替えましょう。あとは終了させたいプロセスを選択後、「タスクの終了」をクリックします。
しばしば言われるのは、FaceRigとの組み合わせでゲーム配信すると重いというものです。いったんFaceRigを終了してどうなるか、試してみるのもよいかもしれません。

見覚えのないプロセスについては、Googleで検索してから終了してください。Windows Updateの可能性もあります。
管理者権限でOBSを起動する
OBSのバージョンが24.0.3以降で、かつGPU負荷が95%以上と高い場合に、OBSを管理者権限で起動する方法です。これによりOBSの優先度を上げます。
- OBSを終了する。
- OBSのアイコンを右クリックし、「プロパティ」を選択する。
- 「互換性」タブを開き、「管理者としてこのプログラムを実行する」にチェックを入れる。
- 「OK」をクリックする。
- OBSを起動する。
NVIDIA NVENC OBS Guideには、以下のように書かれています。
If your GPU utilization is above 95% Windows will start prioritizing the game over everything; this can, in some cases, make your stream lag. To solve this, OBS added an option in OBS 24.0.3 to prioritize OBS Studio over the Game. Just run OBS as Admin, and your stream will be silky smooth.
各種機能を無効にする
ゲーム録画機能であるShadowPlay(Share)も無効にしておきます。「ShadowPlay」と聞いてピンと来ない場合は、読み飛ばしてかまいません。
- GeForce Experienceを起動する。
- 右上の歯車アイコンをクリックする。
- 「ゲーム内のオーバーレイ」を無効にする。
MSI Afterburnerをインストールしている場合も注意してください。OBSと相性がよくありません。
Windows 10の録画機能であるゲームバーも無効にします。
- 「スタート」(画面左下の窓アイコン)をクリックする。
- 「設定」→「ゲーム」→「ゲーム バー」の順にクリックする。
- 「ゲーム バーを使って…」を無効にする。
- 左メニューの「キャプチャ」(または「ゲーム DVR」)を開く。
- 「ゲームをプレイ中にバックグラウンドで記録する」を無効にする。
モニター環境を変える(デュアルディスプレイの場合)
Windows PCの場合、デュアルモニターが原因で配信画面がカクつくことがあります。たとえば、以下のような環境です。
- 高リフレッシュレートのメインモニター(120/144/240Hz)
- かつ、60Hzのサブモニター
この場合、OBSのプレビューを無効にすることで対処できます。
- OBSの画面上で右クリックする。
- 「プレビュー有効化」のチェックを外す。
または、GPUの設定を変更し、60Hz出力に落とす方法でもかまいません。
- デスクトップ画面上で右クリックし、「ディスプレイ設定」をクリックする。
- 「ディスプレイの詳細設定」をクリックする。
- 「ディスプレイ 1 のアダプターのプロパティを表示します」をクリックする。
- 「モニター」タブを開く。
- 「画面のリフレッシュ レート」を「60 ヘルツ」にする。
なお、60Hzどうしのモニターでも問題が起きるという人もいるかもしれません。その場合は、いったんシングルモニターにしてください。
垂直同期、G-SYNCの設定を変更する
上記モニターの話と関連しますが、垂直同期(VSYNC)、およびG-SYNCの設定を変更します。GPU負荷を下げます。
Geforceシリーズのグラフィックボードを搭載しているPCの場合、以下のようにすれば垂直同期の設定ができます。
- デスクトップ画面上で右クリックし、「NVIDIA コントロールパネル」をクリックする。
- 「3D 設定の管理」をクリックする。
- 「グローバル設定」タブを開く。
- 「垂直同期」の設定を変更する。
- 「適用」をクリックする。
▲垂直同期の設定は、どれがベストなのか難しいところです。画面の見え方や操作性にも影響するので、いろいろ試してみてください。
PCゲーム内のオプションにも垂直同期の設定があります。たとえば、バトルロイヤルゲームの『Apex Legends』については、OBSの開発者が以下のようにツイートしています。
If you stream @PlayApex and are having FPS issues with OBS due to a maxed-out GPU, you'll need to reduce GPU usage so that OBS can run as well. The quickest way to do this is to enable Vsync with triple buffering and disable Windows 10 Game Mode. https://t.co/FOPmDyJMNx
— OBS (@OBSProject) February 8, 2019
▲Apex Legendsの初期設定です。「ビデオ」タブ→「垂直同期」が「トリプルバッファ」になっています。
Apexの配信者に向けて、Streamlabsも動画をアップしています。こちらでは垂直同期はOFFにしていました。
G-SYNC対応モニターを使用している人は少ないと思いますが、G-SYNCの設定も変更してみましょう。
- デスクトップ画面上で右クリックし、「NVIDIA コントロールパネル」をクリックする。
- 「G-SYNC の設定」をクリックする。
- 「G-SYNCの有効化」の設定を変更する。
▲G-SYNC対応モニターの場合は、左メニューに「G-SYNCの設定」が表示されます。上記画像で「G-SYNC、G-SYNCとの互換性を有効化」と表示されているのは、FreeSync対応モニターだからです(参考)。
x264のプリセットを変更する
これは、上述のハードウェアエンコーダーを使用できない環境、すなわち「エンコーダ」で「x264」を選んだ場合を前提にしています。
以下のように設定します。
- 「設定」→「出力」の順にクリックする。
- 「出力モード」を「詳細」にする。
- 「CPU使用のプリセット」を「veryfast」にする。
「veryfast」よりも、「superfast」や「ultrafast」にしたほうがPCにかかる負荷は小さくなります。
ただし、負荷が小さいプリセットは映像が荒くなったり、ボヤけるというデメリットがあります。変更するにしても「superfast」が無難でしょう。初期設定は「veryfast」です。
上り速度など、ライブ配信特有の問題を疑う
配信中、OBSの画面右下のアイコンが赤色(または黄色)になっていないか、確認してください。
▲このような状態のときは、「ゲーム自体はいつもどおりなのに、配信画面はカクつく、重い」という感想を持つ人が多いです。
「ドロップしたフレーム」の数字が増えている場合は、上り速度(アップロード速度)がたりていません。
また、配信サイトのサーバーが原因になっている可能性もあります。
対処法については、下記ページをご覧ください。

その他、見直すべき点
最後に、見直すとよいかもしれない点です。
- ソースを削除する(ソースが原因の可能性)
- ブラウザーを閉じる(配信画面を開かない)
- 「設定」→「詳細設定」→「プロセスの優先度」を「高」にする
- 画面キャプチャーを使用している場合は、それ以外の方法で画面を取り込む
- 配信しながら録画している場合は、録画をやめる(配信しながら録画する場合の設定例)
- OBSは複数起動せず、1個だけ起動して配信する(OBS1個で配信する方法)
まとめ
配信画面がカクつくパターンは、大きく2種類に分類できます。
- PCスペックが原因のケース
- PCスペックと関係ない部分の設定が原因になっているケース
つまり、カクついているという結果だけでは、PCスペックが原因になっているのかどうかはわかりません。各種情報を参照し、原因を突き止める必要があります。
そのためには、タスクマネージャーを開いて状況を確認するクセをつけましょう(上述)。CPU使用率が上昇しているのであれば、PCスペックが不足しています。
また、OBSの「表示」→「統計」の存在も覚えておいてください。以下の3種類の情報に注目します。
- レンダリングラグが原因で逃したフレーム
- エンコードのラグが原因でスキップされたフレーム
- ドロップフレーム (ネットワーク)
PCスペックが原因でカクつく場合、対処法はあまり多くありません。
- 各種設定を下げる
- 高性能なPCに買い換える(例 : GALLERIA XA7C-R70S)
- 高性能なグラフィックボードを増設する
- 2台のPCを使って配信する(2PC配信)
新しくPCを買う場合の選び方、およびPCパーツについては、下記ページにまとめておきました。


低スペックなPCで配信する場合は、下記ページも参考にしてください。設定例を掲載しています。

なお、このページの解説を作成するにあたり、下記サイトを参考にさせていただきました。
質問・コメント
こんにちは。OBSStudioをつかって画面がカクカクするのではなく、画面が震えるようなノイズが入るのですが、こういった例はありますでしょうか?
PCはwindows10でCPUはi7です。
ATEM miniを使いPCに接続した場合、OBSStudio画面で症状が現れます。
同じ環境でZoomを利用するとその画面のブレやふるえる状況にはならないため何らかの理由があるのではと思いご質問させて頂きました。