OBS Studio(以下OBS)には、マイクのノイズを除去(低減)するための機能が搭載されています。ノイズ抑制とノイズゲートです。
マイクのノイズを除去することで、
- 「サーッ」「ジーッ」などの音を消せる
- キーボードの打鍵音や、マウスのクリック音が入りづらくなる
- その他、生活音が入りづらくなる
といった効果があります。音質が悪い場合に、これを向上・改善することができるかもしれません。
やり方を見ていきましょう。
関連【OBS】音質が悪いのはこれが原因?CoreAudio AACエンコーダーで音質向上の可能性
目次
マイクの音を聞きながら設定しよう
音声モニタリングの設定
これは必須というわけではないのですが、最初にマイクの音をモニタリングする設定(自分の声が返ってくる設定)にします。
ノイズ除去は、自分の声を聞きながらやったほうが効果を確認しやすいからです。
まず、「音声ミキサー」の歯車アイコンをクリックしてください。すると、「オーディオの詳細プロパティ」が開きます。
▲バージョン28.0以上で表示されるアイコンです。ここに歯車アイコンがない場合は、上部メニューバー「編集」→「オーディオの詳細プロパティ」でも開けます。
設定画面が表示されたら、「マイク」の「音声モニタリング」を「モニターのみ(出力はミュート)」にします。
マイクに声を入れると、自分の声が少し遅れて返ってきます。環境によっては、「サー」という音や、マウスのクリック音がうるさく聞こえるかもしれません。
しかし、一時的な設定なので心配ありません。すぐに設定は戻せます。
設定後はモニタリングをOFFに
注意したいのですが、ノイズ除去の設定後は「モニターオフ」に戻しましょう。
理由は2点あります。
- 「モニターと出力」だと、設定によってはマイクの音が二重になる(ロボ声)
- 「モニターのみ(出力はミュート)」だと、デスクトップ音声の設定によってはマイクの音を配信できない
最初に音声フィルターを追加する
OBSでノイズを除去するためには、マイクに音声フィルターというものを追加する必要があります。
「マイク」横にある縦の3点リーダーをクリックしてください。「デスクトップ」ではなく「マイク」です。そして、「フィルタ」をクリックします。
表示された設定画面で「+」をクリックすると、「ノイズ抑制」と「ノイズゲート」の2種類があります。前者から見ていきましょう。
ノイズ抑制を使う方法
簡単な設定でノイズ除去できるのがノイズ抑制です。
RNNoise
OBSのバージョンが26.0以降の場合、「RNNoise (高品質、CPU使用率高め)」を選んでください。
これは、AIベースでノイズを抑制する新しい方式です。キーボードのタイピング音も除去してくれる強力なフィルターです。
細かい設定項目はありません。そのまま設定画面を閉じます。
ただ、デメリットとして声が途切れたり、叫び声(高音)が一部消えることがあるかもしれません。声質にもよります。
また、筆者が試したかぎりでは、発生条件は不明ですが音が割れたような音質(ロボ声のような)になることもありました。
Speex
もしRNNoiseで問題が起きた場合は、従来方式の「Speex (CPU使用率が低め、低品質)」の出番です。
そのまま「方式」の部分で、Speexに切り替えてみてください。
スライダーを左に動かすほど効果が強くなります。初期設定より強くかける必要はありません。やりすぎると音がゆがみます。
デメリットとして、こもったような音質になります。また、タイピング音もそれなりに入ります。
NVIDIAノイズ除去
準備しないと表示されませんが、環境によっては「NVIDIAノイズ除去」を選べます。これはGPUによるノイズ除去の方法となります(後述)。
NVIDIAノイズ除去は、RNNoiseよりもさらに強力にノイズを抑制してくれます。スライダーで効果を弱められる(調整できる)点もメリットと言えるでしょう。
ノイズゲートを使う方法
この方法は少し難しい設定が必要です。通常は、上述したノイズ抑制のほうを使用してください。
小さな音を通さなくする
ノイズゲートを有効にすると、ある一定の基準よりも小さな音はすべて無音になります。ゲート(門)を閉じ、小さな音を通さないようにする、配信に乗らないようにするというイメージです。この小さな音が、すなわちノイズです。
逆に一定の基準よりも大きな音、すなわち話し声などはゲートを開けて通すので、配信に乗ります。つまり、基準値よりも音が小さいのか、それとも大きいのかによって「ゲートを開ける、開けない」の判断が決まります。
設定方法
ノイズゲートを使えばノイズを軽減できるでしょう。しかし、設定が不適切だと
- しゃべり声が部分的に途切れる
- しゃべっているときだけノイズが入る
- しゃべり終えたとき不自然に音が消える
といった現象が起きます。したがって、初期設定から大きく設定を変える必要はありません。
閾値が重要
「閾値」は「しきいち」と読みます。さきほど「一定の基準」の話をしましたが、この基準が閾値(スレッショルド)です。閉鎖閾値(クローズ)と開放閾値(オープン)の2種類があります。
- 閉鎖閾値よりも小さな音がマイクに入ったとき、その音はミュートになる
- 開放閾値よりも大きな音がマイクに入ったとき、ミュートが解除されて音が出る
- 閉鎖閾値は、開放閾値よりも5dB前後小さくする(スライダーを左に)
- 開放閾値のスライダーを右にしすぎると、音が入らない
NVIDIAのノイズ除去もおすすめ
ノイズを除去する方法として、OBSの機能を使う以外にも以下のようなツールを使う方法があります。
- NVIDIA Broadcast
- RTX Voice
PCにNVIDIA GeforceシリーズのGPUが搭載されている必要がありますが、AIを活用した強力なノイズ除去が可能です。
そして、このNVIDIA Broadcastのノイズ除去機能はOBS 27.0で統合されました。RTXシリーズ限定で使えます。
インストール後、「ノイズ抑制」フィルターの「方式」の部分で選択できます。
詳細については、下記ページをご覧ください。
もしGTXシリーズの場合は、RTX Voiceを導入すればOBSと連携できます。詳細については、下記ページをご覧ください。
音声フィルターの基本操作
有効・無効の切り替え
フィルターの有効・無効を切り替えれば、ノイズ除去の効果がどの程度のものか、容易に比較できます。音声モニタリングを有効にした状態で、目のアイコンをクリックしてください。
繰り返しますが、確認後は音声モニタリングは無効にします。
順番
音声フィルターは上から順に適用されます。この順番は音質に影響するので注意してください。
もし「ノイズ抑制」と「コンプレッサー」の2つを追加しているのであれば、
- ノイズ抑制
- コンプレッサー
となるように、音声フィルターをドラッグして順番を調整します。
削除
フィルターを削除する場合は、ゴミ箱アイコンをクリックします。
保存
フィルターの設定は、シーンコレクションを使って保存しておくとよいでしょう。
高音質にするための根本的な対処法
OBSでのノイズ除去は、あくまでもひとつの対処法でしかありません。
もっと抜本的にノイズの問題を解決したいなら環境を見直しましょう。電源、電磁波、振動がノイズの原因になっていることもあります。
また、オーディオインターフェイスを導入するのも効果があります。プロが使っている本格的なマイクを見たことがあると思いますが、あのマイクがつながっているのがオーディオインターフェイスです。
たとえば、AG03という製品がオーディオインターフェイスとしての役割を持っています。一般的なPCマイクをつなげるだけでも高音質になるので、覚えておいてください。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。
コメント
「閾値」は「いきち」と読みます。
ありがとうございます。
慣用読みとして「しきいち」が通用しているので、
記事でもこの読み方にしています。
しきい値
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%97%E3%81%8D%E3%81%84%E5%80%A4