YouTubeでライブ配信(生放送)する場合、どうしても避けられないのが遅延(タイムラグ)の存在です。完全には解消できません。
しかし、あまりにも遅延が大きいと配信者・視聴者間で話が噛み合わず、ライブ配信のメリットが損なわれます。
▲この例では、配信者が見ている映像を視聴者が見られるようになるのは3秒後です。
では、ライブ配信の遅延を小さくすることはできないのでしょうか。
じつは、YouTubeには遅延を小さくするための設定が存在しており、遅延を2~3秒に短縮できます。設定方法を見ていきましょう。
以下の解説は、PC + 配信ソフトの使用を前提にしています。
目次
ライブ配信における遅延とは
たとえば、配信者が視聴者に対して「みんな調子はどう?」と質問したとします。
このときコメント・チャットで答えが返ってくるまでには、必ず「間」があります。長ければ15秒以上遅れるかもしれません。
この遅れのことを遅延と言います。
「もっと早くコメントしてほしい。反応が遅すぎる」と思う配信者もいるかもしれませんが、視聴者が鈍いわけではありません。
配信者が質問してから、視聴者がその質問内容を聞くまでに、時間差があるのです。たとえば、質問 → 10秒後 → 質問が届く、というイメージです。
しかし、遅延をなくすことはできません。私たちにできるのは、設定で遅延を小さくすることです。
ダッシュボードを開こう
遅延設定を行うには、基本的にYouTubeのダッシュボードを開きます。
もし配信中の場合は、いったんYouTube配信を終了してください。配信中は遅延設定を変更できないからです。
突発配信の場合
YouTubeにアクセスし、右上のカメラアイコンから「ライブ配信を開始」をクリックします。
「エンコーダ配信」をクリックしてください。画面が切り替わり、ダッシュボードが表示されます。
予約配信の場合
予約配信の場合は、YouTubeのこちらのページにアクセスしましょう。
「近日配信」のサムネイルをクリックします。すると、画面が切り替わってダッシュボードが表示されます。
もし「近日配信」がない場合は、スケジュール設定から画面を進めていくことでダッシュボードが表示されます。
配信ソフトに統合された機能を使う場合
ややこしい話になりますが、近年は配信ソフトでも遅延設定ができるようになっています。
たとえば、OBS Studio(以下OBS)の場合は、「配信の管理」ボタンをクリックしたところに設定項目があります(バージョン27.1以降)。
この場合、わざわざYouTubeのダッシュボードを開く必要はありません。OBS側でYouTubeの設定ができるからです。
▲OBSの設定画面
従来、YouTubeにアクセスしなければ遅延設定はできませんでした。しかし、OBSのアップデートによりYouTubeの配信機能がOBSに統合され、その手間を省けるようになったという経緯があります。
また、Streamlabs Desktopや、XSplitの場合も同様です。やはりダッシュボードを開く必要はありません。
▲Streamlabs Desktopの設定画面
▲XSplitの設定画面
ただ、どうしてもダッシュボードを開きたい場合は、上述した「予約配信の場合」をご覧ください。突発配信の場合もです。
遅延設定を変更しよう
便宜上、ダッシュボードの画面を掲載していますが、上述したとおり必ずしもダッシュボードを開く必要はありません。
また、配信中は遅延設定を変更できません。
超低遅延
超低遅延(Ultra low latency)は、遅延をいちばん小さくできる設定です。約2~3秒まで遅延を短縮できるので、通常はこれを選ぶとよいでしょう。
ただし、超低遅延にしたことで配信が途切れる(止まる)場合は、低遅延の選択も検討してみてください。この現象は、超低遅延設定のデメリットのひとつです。
1440p、および4K(2160p)解像度には対応していません。ただ、通常は気にする必要はありません。ほとんどの配信者は1080p、または720pで配信しているからです。
▲この設定の場合、「出力 (スケーリング)解像度」が1920x1080になっているので1080pになっています。1280x720ならば720pです。どちらも超低遅延設定に対応しています。
なお、2024年9月7日現在、上記YouTubeヘルプを読むかぎり1440pは超低遅延設定に対応していると解釈できる余地はあります。つぎのように書かれてあるからです。
この設定では、4K の解像度はサポートされていません。
超低遅延に対応していないと明記されているのはあくまでも4Kについてであり、1440pについては言及がありません。したがって、1440pは超低遅延に対応しているようにも読めます。
しかし、1440p、超低遅延で配信すると映像がカクつきます。また、YouTube Studioでも配信中に下記エラーが表示されます。
動画の解像度を変更する必要があります。現在の解像度(2560x1440)はこの設定ではサポートされていません。(1920x1080)の解像度を推奨します。
さらに、YouTube Studioの「超低遅延」のところには、以下のような記述があります。
字幕、1440p、4K解像度には対応していません
実際、遅延設定を「低遅延」に変更するとスムーズに配信でき、エラーも出ません。
したがって、1440pは超低遅延に対応していない(非対応)と考えたほうがよいでしょう。
低遅延
低遅延(Low latency)を選ぶと、約9~11秒の遅延となります。
超低遅延よりは遅延が大きいけれども通常の遅延よりは遅延が小さいという、バランス型の設定です。
この程度であれば遅延が特別大きいというわけではありません。しかし、超低遅延と比較すると配信が遅れているという感覚がどうしても残ります。
超低遅延と同様、低遅延も4K解像度には対応していません。
通常の遅延
通常の遅延(Normal latency)は、遅延がいちばん大きい設定です。
視聴者とリアルタイムで交流することはできませんが、代わりに高品質な配信ができるという位置づけです。
一般的に、この設定を選ぶ場面は多くないでしょう。遅延が大きすぎます。
何秒?遅延時間を確認しよう
遅延が実際のところ何秒あるのか、設定を変更した意味があるのか、気になる人もいるかもしれません。
遅延を調べるには、いつもどおり配信を開始します。そのうえでYouTubeにアクセスして再生画面上で右クリックし、「詳細統計情報」をクリックします。
▲右クリックでメニューが開くので、「詳細統計情報」を選びます。
そして、「Live Latency」という部分を見てください。「2.81s」と表示されている場合は、2.81秒の遅延があるという意味です。
もし「0.00s」と表示されている場合は、「ライブ」をクリックしましょう。すると、左横の灰色の丸が赤色に変化し、「Live Latency」に遅延時間が表示されます。
なお、他人の配信を視聴しているときも同様の方法で遅延時間を調べられます。
遅延を追加しないようにしよう
YouTube側
YouTubeには「遅延の追加」という設定があります。ここは「なし」を選択してください。
▲「30秒」や「60秒」に設定すると、文字どおり遅延が追加されます。
「遅延は小さいほうがよい」と考えている人からすると、なぜわざわざ配信を遅延させるための設定が存在するのか、疑問に思うかもしれません。
理由は簡単です。バトルロイヤルゲームなどでは、同じ試合に参加している視聴者に自分の居場所がバレると不利になってしまいます(ゴースティング、ストリームスナイピング)。それを防ぐために、あえて遅延を追加する配信者がいるのです。
配信ソフト側
OBSにも遅延を追加する設定があります。ここも無効にしておいてください。
- 「設定」→「詳細設定」の順にクリックする。
- 「遅延配信」の「有効にする」のチェックを外す。
- 「OK」をクリックする。
OBSをベースに開発されたStreamlabs Desktopにも同様の設定があります。
- 左下の歯車アイコンから「詳細」タブを開く。
- 下にスクロールし、「ストリーム遅延」の「Enable」のチェックを外す。
- 「完了」をクリックする。
XSplitの場合も遅延を無効にします。
- 「ブロードキャスト」をクリックする。
- 「YouTube Live」横の歯車アイコンをクリックする。
- 「放送の遅延を有効にする」のチェックを外す。
- 「OK」をクリックする。
まとめ
遅延が大きいと、配信者・視聴者間で円滑にコミュニケーションをとることができません。遅延を小さくしたいのであれば、ひとまず超低遅延設定に変更してみましょう。
ほかにも遅延を低減する設定(画質設定)は存在しますが、細かい話になります。今回の設定が低遅延にするための基本中の基本となります。
もし配信が重い、カクカクする場合は、下記ページをご覧ください。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。