任天堂は2018年11月29日、「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公開しました。
ひとことで言って、ゲーム実況を広く認めた、きわめて画期的なガイドラインとなっています。
動画投稿だけでなく、現在のニーズに合わせてライブ配信にも完全対応しています。任天堂のゲームが大好きという方は、ぜひポイントを押さえておきましょう。
関連 許可を取りたい、収益化したいときどうする?ゲーム実況をやる前の注意点
目次
要点は2つだけ
許可不要でゲーム実況ができる
このガイドラインでは、任天堂のゲームについて以下のことが認められています。
- 実況動画を投稿すること
- ゲーム配信(ライブ配信)をすること
- スクショを投稿すること
つまり、ガイドラインの範囲内であれば、自由に任天堂のゲームを利用できます。しかも、事前の申請・審査は必要ありません。
ガイドラインでは、「ゲーム実況」「実況」「ストリーミング配信」といった用語が明記されており、任天堂が正式にゲーム実況を認めたかたちになります。
収益化しやすい
とくにライブ配信(生配信)で影響が大きいのですが、収益化が広く認められています。ゲーム実況でお金を稼いでも問題ありません。
個人であるお客様は、任天堂のゲーム著作物を利用した動画や静止画等を、営利を目的としない場合に限り、投稿することができます。ただし、別途指定するシステムによるときは、投稿を収益化することができます。
指定された配信サイトでのみという条件つきであるものの、ほとんどの定番サイトで収益化できるのは大きなポイントです(後述)。
また、ガイドラインを遵守するかぎりにおいて、以下のように明示されている点も見逃せません。
適切な動画や静止画の共有サイトに投稿(実況を含む)することおよび別途指定するシステムにより収益化することに対して、著作権侵害を主張いたしません。
いままでとどう違うのか
ひょっとしたら、「いままでと同じじゃないか?」と思う人もいるかもしれません。今回のガイドラインで、どこが変わったのでしょうか。
対応する配信サイトが増えた
いままでは、任天堂のゲームをライブ配信できるサイトは限られていました。
意外に思うかもしれませんが、正式にはニコ生、およびOPENRECの2サイトのみ認められているにすぎなかったのです。
しかし、今回のガイドラインでは、「適切な動画や静止画の共有サイト」でゲーム配信することが認められています。つまり、対応サイトが増えました。
任天堂による審査がなくなった
いままで任天堂のゲーム実況動画を適法に投稿するためには、たとえば初めに「Nintendo Creators Program」というサービスに登録してからYouTubeに動画を投稿する必要がありました。
また、任天堂の審査にパスして初めて収益化が可能だったのですが、今回のガイドライン公開に伴い同サービスは終了し、申請・審査の手間を省けるようになりました。
なお、同サービスの「収益化が可能な任天堂タイトルリスト」も併せて廃止されています。
収益化できる範囲が広がった
いままでは収益化できる範囲が狭く、しかも複雑でした。
たとえば、ニコ動では「クリエイター奨励プログラム」(クリ奨)で収益化できるにもかかわらず、ニコ生ではそれができないという状況でした(参考URL)。
さらにニコ生について言うと、収益化はできないけれども、任天堂が指定したタイトルについてはライブ配信できるというような、一見して複雑なシステムだったのです(参考URL)。
しかし、こういった状況は今回のガイドラインで打破されました。すなわち、「別途指定するシステム」によって収益化することが可能となっています。
この「別途指定するシステム」というのは、あまり難しく考える必要はありません。ようは、指定された配信サイトでは収益化できるという意味合いです。
動画サイトごとのポイント
ここからは、今回のガイドラインでサイトごとにどのようなメリットが生まれたか見ていきましょう。
YouTube
- 動画投稿 : ○
- ライブ配信 : ○
- 収益化 : ○(YouTube パートナープログラム)
まず、動画については自由に投稿できるようになりました。上述したとおり、Nintendo Creators Programは終了するため、申請・審査が不要となったからです。
また、同サービスの終了に伴い、動画投稿によって発生した収益を任天堂とのあいだで分配する必要がなくなりました。
ライブ配信については、「YouTube パートナープログラム」により、「Super Chat」(スパチャ)や「チャンネルメンバーシップ」による収益化も可能になっています。
いままでライブ配信はNintendo Creators Programで認められていませんでした。
ニコニコ
- 動画投稿 : ○
- ライブ配信 : ○
- 収益化 : ○(クリエイター奨励プログラム、ニコニコチャンネル)
ニコ生では従来、クリエイター奨励プログラムに対応しておらず、収益化できるのはあくまでも動画投稿の場合だけという状況でした。
それが今回、ガイドラインの公開に伴い、ニコ生も同プログラムに対応することになりました(参考URL)。したがって、任天堂のゲームを配信して収益化できます。
さらに、ニコニコチャンネルを持っている人に朗報なのですが、会員限定配信や都度課金にも同プログラムが対応することになり、任天堂のゲームを利用した収益化の範囲が広くなりました。
Twitch
- 動画投稿 : ○
- ライブ配信 : ○
- 収益化 : ○(Twitchアフィリエイトプログラム、Twitchパートナープログラム)
「Twitchアフィリエイトプログラム」、および「Twitchパートナープログラム」により、任天堂のゲームを利用して収益化できるようになりました。
OPENREC
- 動画投稿 : ○
- ライブ配信 : ○
- 収益化 : ○(OPENREC Creators Program)
もともとライブ配信については、「OPENREC Creators Program」に参加することにより、任天堂が指定するタイトルについて配信が可能でした。
今回のガイドライン公開により、同プログラムに参加せずとも任天堂のゲームを配信できるようになりました(参考URL)。
収益化したい場合は、いままでどおり同プログラムに参加する必要があります。その点は注意してください。
ツイキャス
- ライブ配信 : ○
- 収益化 : ○(2019年4月1日追加)
ミラティブ
- ライブ配信 : ○
- 収益化 : ○(2019年4月1日追加)
X(旧Twitter)
- 動画投稿 : ○
- ライブ配信 : ○
- 収益化 : ○(Amplifyパブリッシャープログラム)
いままでは、Switchのキャプチャーボタンから30秒間の動画やスクショを投稿できるだけでした。
今後は、キャプチャーボードを使った動画投稿、およびゲーム配信ができます。
- 動画投稿 : ○
- ライブ配信 : ○
- 収益化 : ○(Facebookゲームストリーマー、Facebookレベルアッププログラム)
いままではツイキャスと同様、Switchのキャプチャーボタンから30秒間の動画やスクショを投稿できるだけでした。
今後は、キャプチャーボードを使った動画投稿、およびゲーム配信ができます。
注意点は?
注意点もあります。ザッと確認しておきましょう。
- 収益化できる場合を除き、営利目的の場合はガイドラインの対象外
- 法人はガイドラインの対象外(例外あり)
- 発売まえのゲームについては、任天堂が公式に公開したゲーム著作物のみを利用できる
- チートを使ったものはダメ
- PVを転載しただけの動画は、創作性がないのでダメ
- 任天堂以外の第三者の著作権が動画に含まれている場合は、そちらの許諾も必要
Switchのゲームを録画・ライブ配信する方法
ゲーム画面をPCに映す方法
では、任天堂の作品をゲーム実況したいという場合、どのような機材を用意すればよいのでしょうか。
まず必要なのは、キャプチャーボードというPCの周辺機器です。ゲーム機をキャプチャーボードに接続すると、ゲーム画面がPCに映ります。
ゲームを録画する方法
あとは、キャプチャーボードに付属されているソフトを起動して、録画ボタンをクリックしましょう。たったこれだけです。
生でゲーム配信する方法
ゲーム配信については、キャプチャーボードのほかに、さらに配信ソフト(無料)というものが必要です。PCに映っているゲーム画面を、配信ソフトで視聴者に見せましょう。
まとめ
任天堂が公開したガイドラインは、ゲーム実況の歴史に残る画期的なものです。
大手ゲームメーカーで、ここまで広範に自社の著作物の利用を認めたガイドラインは存在しません。しかも、日本のメーカーとしては珍しく、収益化を広く認めている点もポイントです。
ゲーム実況者だけでなく、知的財産権の研究者や、弁護士などの法曹実務家も一目置く可能性があるガイドラインと言えるでしょう。
ガイドラインに幾度となく登場する「創作性」「コメント」というキーワードが印象的でした。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。
コメント
「非営利であれば、趣味のゲーム実況でお金を稼いでも問題ありません。」
お金稼いでるなら営利じゃん。
不思議な感じがするかもしれませんが、任天堂のガイドラインでは
お金を稼いでも営利目的とはみなされません。
>個人であるお客様は、任天堂のゲーム著作物を利用した動画や静止画等を、
>営利を目的としない場合に限り、投稿することができます。
>ただし、別途指定するシステムによるときは、投稿を収益化することができます。
ほかのゲームメーカーのガイドラインも同様の解釈を
取っているケースが多いです。
併せて下記ページもご覧ください。
許可を取りたい、収益化したいときどうする?ゲーム実況をやる前の注意点
https://vip-jikkyo.net/guideline#i-8
誤解防止のため、念のため書き換えておきます。
「非営利であれば、趣味のゲーム実況でお金を稼いでも問題ありません」
↓
「ゲーム実況でお金を稼いでも問題ありません」