OBS Studio(以下OBS)で配信するさい、どのように設定すれば高画質な配信ができるのでしょうか。画面が粗く(荒く)て困ったという経験は、だれもがあるはずです。
画質で重要なのは以下の設定です。
- ビットレート
- 解像度
- その他、細かいオプション
少し説明が長くなりますが、ポイントを押さえていきましょう。
ライブ配信用の記事です。録画の場合は、「OBSで超高画質録画するための、シンプルなポイント。じつは数字をいじるだけ」をご覧ください。
関連【OBS】音質が悪いのはこれが原因?CoreAudio AACエンコーダーで音質向上の可能性
目次
ビットレートの設定をしよう
ビットレートとは
画質をよくしたいなら、まずはビットレートの設定が重要です。
- 「設定」→「出力」の順にクリックする。
- 「出力モード」を「詳細」にする。
- その下の「配信」タブを開く。
- 「レート制御」が「CBR」になっていることを確認する(後述)。
- 「ビットレート」に数字を入力する(例 : 6,000kbps)。
ビットレートは、たとえば「6000kbps(キロビーピーエス)」というような数字で表します。視聴者が配信画面を見たとき、数字が大きいほど高画質にできる(画面が荒くなりづらい)と思ってください。
▲出典 : 『スーパーマリオ オデッセイ』(任天堂)より
逆に数字が小さすぎると、動きの激しい映像では画質が粗くなり、モザイクがかかったような映像になることがあります。
このモザイクのことをブロックノイズといいます。
ビットレートには、映像ビットレートと音声ビットレートがあります。上で書いたのは映像ビットレートの設定です。
音声ビットレートも、基本的には数字が大きいほど高音質になります。
- 「設定」→「出力」の順にクリックする。
- 「出力モード」が「詳細」になっていることを確認する。
- その下の「音声」タブを開き、「音声ビットレート」を選択する(例 : 160kbps)。
むやみに高ビットレートにできない理由
では、単純に大きな数字にすればよいのかというと、そうではありません。なぜなら、以下の2つの理由があるからです。
- 配信サイト側で、ビットレートに上限が設けられている
- 配信者のインターネット速度(上り)が遅いことがある
配信サイトのビットレートの上限というのは、たとえば6,000kbpsを大きく超えるビットレートだと配信が切断される、不安定になるというような制限です。
つまり、配信サイト側の仕様です。ユーザー側ではどうしようもありません。
また、配信者の上り速度が遅いというのは、たとえば上りの速度が800kbpsしか出ないというような状況を考えてください。下りの速度ではない点に注意が必要です。
ビットレートの決め方
具体例
では、ビットレートの設定はどうすればよいのでしょうか。以下のように考えていきます。
- 配信サイトの上限ビットレートを調べる。
- 自分の家の上り速度を調べる。
- 1と2を比較し、低いほうに合わせてビットレートを設定する。
たとえば、配信サイトのビットレート上限が2,500kbpsで、かつ自分の上り速度が10,000kbpsであれば、2,500kbpsに設定します。
かりに上り速度が800kbpsの場合は、2,500kbpsに設定してはいけません。紙芝居のようにカクカクと動く配信になるからです。
配信サイトごとのビットレート上限
配信サイトごとのビットレート上限については、下表をご覧ください。注意したいのですが、ビットレート上限は映像ビットレートと音声ビットレートを合計したものです。
ビットレート上限 | 設定例(映像+音声) | 備考 | |
ニコ生 | 6,000kbps | 5,872+128 | |
ツイキャス | 60,000kbps(60Mbps) | 5,872+128 | 事実上、上限なし(参考) |
Twitch | 6,000kbps | 5,872+128 | |
YouTube Live | 51,000kbps(51Mbps) | 5,872+128 | 事実上、上限なし(参考) |
OPENREC | 5,000kbps | 4,872+128 | |
ミラティブ | 1,000kbps | 936+64 |
インターネット環境によっては、上表どおりの設定をするとOBSの右下のアンテナが赤色になり、映像が滑らかに動かずカクカクするかもしれません。
その場合はビットレートを下げます。
ビットレートのめやすについて詳しく知りたい場合は、下記ページをご覧ください。ただ、読むのに時間がかかるかもしれません。後まわしでもOKです。
解像度はビットレートとセットで考えよう
解像度の設定
高画質にしたいなら解像度の設定も重要です。
「解像度」という用語はいろいろな場面で用いられますが、ここでは配信サイトへ映像を出力するさいの画面サイズ(幅x高さ)のことだと思ってください。
たとえば、YouTubeなどで「1080p」「720p」などの表記を見かけることがあると思いますが、その画面サイズのことを解像度と表現しています。
- 1080p : 1920x1080
- 720p : 1280x720
OBSでの設定方法は以下のとおりです。
- 「設定」→「映像」の順にクリックする。
- 「出力 (スケーリング) 解像度」で任意の解像度を設定する(例 : 1280x720)。
- 「縮小フィルタ」で「ランチョス」を選択する。
「縮小フィルタ」は、「基本 (キャンバス) 解像度」を「出力 (スケーリング) 解像度」に縮小するさいに使う機能です。ここを変えることで出力される画面サイズが変わり、シャープな画質になったり、逆に色がにじむ場合があります。
また、「基本 (キャンバス) 解像度」と「出力 (スケーリング) 解像度」の設定が同じである場合は、「縮小フィルタ」は設定できません。画面サイズが同一なので、縮小する必要がないからです。
なお、細かい話になりますが、「出力」タブ→「配信」タブの「出力をリスケールする」は「無効」にしておきます。通常、この設定は使いません。
▲この設定は「出力モード」を「詳細」にすると現れます。
画面サイズについて不明な点がある場合は、下記ページをご覧ください。
安易に1920x1080したらダメ
ひょっとしたら、「『出力 (スケーリング) 解像度』は1920x1080にしたほうが高画質になるのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、ライブ配信では以下の3つを考える必要があります。
- 映像ビットレートの設定
- 配信者のPCスペック
- 配信サイトの仕様
解像度を大きくしても、映像ビットレートが不足していると逆に画質が落ちてしまいます。
たとえば、映像ビットレートを500kbps、解像度を1920x1080に設定したらどうなるでしょうか。下記画像のように画質が破綻します。解像度に対して、映像ビットレートが極端に不足するからです。
▲明らかにビットレートがたりない状態です。ゲーム画面は『スーパーマリオ オデッセイ』(任天堂)より
解像度の設定は、ビットレートとセットで考えましょう。上り速度が遅い場合、高ビットレートにできないため、1920x1080の解像度はあきらめてください。
また、上り速度に問題がなくてもPCのスペックが問題になるケースがあります。というのも、解像度が大きいほどPCに大きな負荷がかかり、映像が滑らかに動かなくなる場合があるからです。
たとえば、1280x720と1920x1080を比較した場合、後者のほうがPCの動作が重くなります。
したがって、もし低スペックなPCを使用しているのであれば、解像度を1920x1080にしてはいけません。
配信サイトごとの設定例
ここも重要ですが、配信サイトによっては1920x1080に設定しても意味がない、配信できない場合があります。
解像度の設定は下表を参考にしてください。
解像度の設定例 | |
Twitch | 1280x720、1920x1080 |
YouTube Live | 1280x720、1920x1080 |
ニコ生 | 1280x720 |
ツイキャス | 1280x720、1920x1080 |
OPENREC | 1280x720、1920x1080 |
ミラティブ | 640x360 |
基本的には1280x720がおすすめです。なぜなら、画質やPCスペックとの関係で無難な設定だからです。また、この解像度は一般的な配信サイトであれば対応しています。
配信環境に問題がなく、かつYouTubeで画質を突き詰めたいなら1920x1080がよいでしょう。
映像エンコーダーを決めよう
映像エンコーダーとは
ビットレート・解像度と同じくらい、またはそれ以上に重要なのが映像エンコーダーの設定です。
- 「設定」→「出力」タブを開く。
- 「出力モード」を「詳細」にする。
- 「配信」タブを開く。
- 「映像エンコーダ」の部分を見る。
映像エンコーダーとは、データ量を減らす(圧縮する)ために使われるプログラムのことです。OBSで配信するうえで不可欠なものだと思ってください。
どの映像エンコーダーを使うかによって2つのことが違ってきます。
- 画質・品質
- PCにかかる負荷
「映像エンコーダ」で表示される項目は環境・設定によって異なりますが、一例として下表のような選択肢が表示されます。
説明 | |
NVIDIA NVENC H.264 | GPUがGTX/RTXシリーズの場合に選択可能 |
AMD HW H.264 (AVC) | AMD製の内蔵GPU、Radeonの場合に選択可能 |
QuickSync H.264 | インテル製の内蔵GPU(第5世代以降)の場合に選択可能 |
アップル VT H264 ハードウェアエンコーダ | Macの場合に選択可能 |
x264 | すべてのPCで選択できる |
NVIDIA NVENC AV1 | GPUがRTX 40シリーズの場合に選択可能 |
AMD HW AV1 | Radeon RX 7000シリーズの場合に選択可能 |
QuickSync AV1 | Intel Arcシリーズの場合に選択可能 |
AOM AV1 | 通常は選ばない |
SVT-AV1 | 通常は選ばない |
NVIDIA NVENC HEVC | 同上、HEVCの別名はH.265 |
AMD HW H.265 (HEVC) | AMD製の内蔵GPU、Radeonの場合に選択可能 |
QuickSync HEVC | インテル製の内蔵GPU(第6世代以降)の場合に選択可能 |
H.264系が無難
このなかでどれを選べばよいのかは、難しい問題です。なぜなら、PCスペックや配信サイトの仕様を考慮する必要があるからです。
ただ、無難さでいえば「NVIDIA NVENC H.264」になるでしょう。これはNVIDIAのGPUを搭載しているPCにかぎり表示されます。画質、負荷、配信サイトの仕様などを考えるとバランスが取れています。
▲出典 : NVIDIA公式サイトより。こちらの4Gamerの記事も参考になります。
「NVIDIA NVENC H.264」を選べない場合は、「264」という数字が入ったものを選んでください。たとえば「QuickSync H.264」などです。
「x264」でもよいのですが、これは画質はよい代わりにCPU使用率が増えるため、場合によってはPC動作が重くなるかもしれません。
画質的には「AV1」の表記があるものや、「HEVC」の表記があるものがベストではあります。
しかし、両方とも大半の配信サイトが対応していません。したがって、いまのところは選ぶ機会は少ないでしょう。無難なのはH.264系のエンコーダーです。
AV1 | HEVC | H.264 | |
ニコ生 | × | × | ◯ |
ツイキャス | × | ◯ | ◯ |
Twitch | ×(対応予定) | ×(対応予定) | ◯ |
YouTube Live | ◯ | ◯ | ◯ |
OPENREC | × | × | ◯ |
ミラティブ | × | × | ◯ |
「映像エンコーダ」の設定方法については、下記ページも併せてご覧ください。
画質に影響する細かい設定
通常は上述したビットレート・解像度の設定を見直すことが最重要事項ですが、OBSにはもう少し細かい画質設定が存在します。
CBRとVBR
ビットレートの設定では、CBRとVBRについて頭の片隅に留めておきましょう。この設定は画質や安定性に関係してきます。
- 「設定」→「出力」の順にクリックする。
- 「出力モード」が「詳細」になっていることを確認する。
- その下の「配信」タブを開き、「レート制御」が「CBR」になっていることを確認する。
CBRというのは、ビットレートが変動しないようにする設定のことです。VBRはその反対で、映像の状態に合わせてビットレートが変動する設定です。
- CBR(constant bitrate) : 固定ビットレート
- VBR(variable bitrate) : 可変ビットレート
ライブ配信では基本的にCBRでよいでしょう。Twitchなど主要な配信サイトはCBRを推奨しています。
参考 配信の健全性とTwitchインスペクターの使用に関するガイド(外部サイト)
なお、録画目的でOBSを使用するする場合は、逆にCBRにはしません。「CQP」や「CRF」などを選びます。
フレームレート
フレームレートの設定も画質に影響します。
- 「設定」→「映像」の順にクリックする。
- 「FPS 共通値」が「30」になっていることを確認する。
フレームレートは動きの滑らかさを表しており、「30fps」といえば1秒間に30個の画像が表示されて切り替わるという意味合いです。パラパラマンガと同じで、60fpsのほうが30fpsよりも滑らかに動きます。
▲出典 : 『スーパーマリオワールド』(任天堂)より
基本的には30fpsにしておいてください。むやみに数字を大きくしても、画質低下やPCの動作が重くなる原因になります。
もちろん、60fps以上で動くゲームで(例 : Apex Legends)、かつ動きの滑らかさを重視したいなら60fpsにしてもかまいません。
なお、ニコ生は30fpsまでの対応となっており、60fpsに設定しても30fpsで表示されます。
プリセット
プリセットを変更することでも画質を上げることができます(ただし重くなる)。プリセットとは、あらかじめ用意されている設定のことです。
- 「設定」→「出力」の順にクリックする。
- 「出力モード」が「詳細」になっていることを確認する。
- その下の「配信」タブを開く。
- 「プリセット」を変更する。
このプリセット設定ですが、上述した「映像エンコーダ」でどれを選んだかによって表示される設定が異なり、しかも内容が複雑であるため、設定変更のさいはじゅうぶん注意してください。
たとえば、「映像エンコーダ」で「NVIDIA NVENC H.264」を選んだ場合、「プリセット」ではP1~P7まで選ぶことができ(OBS 28.1以降)、数字が大きいほど高画質・高負荷となります。
- 高画質にしたい → 「P5: Slow (高品質)」「P6: Slower (より高品質)」など
- 低負荷にしたい → 「P3: Fast (低品質)」「P4: Medium (中品質)」など
また、ほかにも「チューニング」や「マルチパスモード」の設定が表示され、「プリセット」も含めてNVENCプリセット設定は3つ存在します。
通常は初期設定から変更する必要はありません。興味がある場合のみ変更し、画質を比較してみてください。
備考
ワイプとスケールフィルター
出力解像度を縮小したり、配信画面に小さくワイプ(PinP)を入れる場合、スケールフィルターを適用することで見やすくなる(ギザギザが消える、輪郭が滑らかになる)ケースがあります。
- フィルターを適用したいソース上で右クリックする。
- 「スケールフィルタ」にカーソルを合わせる。
- 適当なものを選ぶ(例 : 「ランチョス」)。
スケールフィルターの種類は、各ソースごとに自分がよいと思うものを使ってください。ソースの内容・サイズによって最適なものは異なります。
視聴側の画質設定
配信サイトの動画プレイヤーの画質設定によっては、低画質に見えることがあるかもしれません。
たとえば、視聴者側でYouTubeの画質を「360p」にしていたとします。この場合、たとえ配信者がOBSで1080pに設定して配信していたとしても、視聴者の環境では低画質な状態で動画が再生されます。
まとめ
上り速度や配信サイトの仕様、PCの負荷を総合的に考えて、画質を設定しなくてはいけません。一筋縄ではいかない部分もあるでしょう。
基本的には、高画質な設定は高負荷になりやすく、逆に低負荷な設定は低画質になりやすいという傾向があります。したがって、画質を優先的に考えると高性能なPCのほうが有利です。
もし高画質な設定にした結果、PCが重い、配信画面がカクつくという場合は、下記ページをご覧ください。設定を見直す必要があります。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。
コメント
縮小フィルタですが、録画の場合は
何を選んだ方が良いのでしょうか・・
録画の場合も基本的にライブ配信の場合と同じ考え方になります。
ただ、録画だと配信サイトの仕様を考える必要もないので、
おそらく「基本 (キャンバス) 解像度」と「出力 (スケーリング) 解像度」は
同じ解像度にしているはずです。
その場合は、「縮小フィルタ」はどれにしても画質に影響はないです。
OBS配信をしようと思っているんですが、何故か配信しても2-3秒で画質が荒くなってしまいます。
止まっている間は画質が安定していますが、動いて2-3秒ごとに画質が安定して2-3秒ごとに画質が荒くなります。
どうすればずーーーと画質が荒れる事なく安定する配信ができますでしょうか?
corei7 6700
メモリ16GB
グラボ Geforce GTX 1070 8GB
モニター144Hz
回線速度どのサイトが正しいのか分かりませんが上り520MbPS下り370Mbps
回答が完全な勘になってしまって申し訳ないのですが、
OBSの設定画面で「出力」→「出力モード」→「詳細」で、
「プロファイル」の部分を「baseline」にしてみてください。
また、同じく「出力」で「キーフレーム間隔」が
0秒になっているのであれば2秒にします。
加えて、「詳細設定」→「YUV色範囲」が「全部」に
なっているのであれば「一部」にすることで直るかもしれません。
通常は、ビットレート、解像度、フレームレートの3点が
完璧ならば映像が荒くなることはないので、
うまくいかないかもしれませんが…。
基本解像度とはモニターの解像度とありますが、キャプチャーしているゲームをフルスクリーンでプレイしていない場合でも1920×1280に設定したほうが良いのでしょうか。
基本解像度は、へたに変えるとトラブルのもとなので、
原則として変えないほうがよいかと思います。
モニターの解像度が1920x1080なら、ゲームをフルスクリーンで
プレイしていない場合でもそのままでOKです。
そうなんですね、PCや配信は素人なので助かりました。ありがとうございます。
OBS23.0にアップデートしてからビットレートが安定しなくなりました。
今までは9000でもずっと緑だったのが、今では赤くなったり緑になったりと不安定です。5000に下げても同じく不安定です。
どうしたらよくなるなど分かる方はご教授お願い致します。
質問です。
今まで配信しながらゲームをしていても、特に問題ありませんでしたが、最近OBSのフレームレート落ちに悩まされています。
windows update数日後から不調で色々試してみましたが治りません。
もし、心当たり有る修正方法等ご教授頂けたら幸いです。
スペック
core i7 7700
メモリ16G
グラボ Geforce GTX 1060 6G
たとえばですが、Windows Update後にWindows 10のゲームモードが
ONに戻ってしまって、フレームレートが出ないというケースがあります。
まずは、そのあたりをチェックされてみてはいかがでしょうか。
https://vip-jikkyo.net/fps-drops-in-obs-studio#i-4