OBS Studio(以下OBS)を使用中、配信画面がカクカクする、PCが重いというケースに遭遇したことがあるかもしれません。
どうすればこれを改善できるのでしょうか。以下の2点について見ていきます。
- 画面がカクつくのを直す方法
- PCの動作、OBSを軽くするための設定方法
便宜上、ライブ配信を前提にしていますが、一部を除き録画の場合も基本的には同じです。
関連【OBS】カクつく原因を特定!問題を切り分けて設定で直す方法
目次
右下のアンテナが赤色のときは
配信中、OBSの画面右下のアンテナが赤色(または黄色)になっていないか、確認してください。
▲アンテナのアイコンが赤色の状態のときは、「ゲーム自体はいつもどおりなのに、配信画面はカクつく、重い」という感想を持つ人が多いです。
その状態で「ドロップしたフレーム」が増え続けている場合は、上り速度(アップロード速度)がたりていません。
また、OBSの設定のほか、プロバイダーや配信サイトのサーバーが原因になっている可能性もあります。
対処法については、下記ページをご覧ください。
ハードウェアエンコーダーを使用する
PCの動作を軽くするための方法として、近年とくに注目されているのがPCのGPUという部分を使って配信する方法です(GPUエンコード)。
そこで、まずは以下の設定ができているか確認しましょう。
- 「設定」→「出力」の順にクリックする。
- 「出力モード」を「詳細」にする。
- その下の「配信」をクリックする(録画の場合は「録画」)。
- 「映像エンコーダ」を「NVIDIA NVENC H.264」にする(選べるなら)。
- 「キーフレーム間隔」を「2」秒にする(録画の場合は0秒)。
- 「OK」をクリックする。
「映像エンコーダ」の部分に表示される項目については、下表を参考にしてください。ややこしいのですが、PC環境やOBSの設定によって表示される項目が異なります。
説明 | |
x264 | すべてのPCで選択できる(ソフトウェアエンコーダー) |
NVIDIA NVENC H.264 | GPUがGTX/RTXシリーズの場合に選択可能 |
NVIDIA NVENC HEVC | 同上、HEVCの別名はH.265 |
NVIDIA NVENC AV1 | GPUがRTX 40シリーズの場合に選択可能 |
AOM AV1 | 通常は選ばない(ソフトウェアエンコーダー) |
SVT-AV1 | 通常は選ばない(ソフトウェアエンコーダー) |
QuickSync H.264 | インテル製の内蔵GPU(第5世代以降)の場合に選択可能 |
QuickSync HEVC | インテル製の内蔵GPU(第6世代以降)の場合に選択可能 |
QuickSync AV1 | |
AMD HW H.264 (AVC) | AMD製の内蔵GPU、Radeonの場合に選択可能 |
AMD HW H.265 (HEVC) | AMD製の内蔵GPU、Radeonの場合に選択可能 |
AMD HW AV1 | |
アップル VT H264 ハードウェアエンコーダ | Macの場合に選択可能 |
一般論として「x264」「AOM AV1」「SVT-AV1」以外を選ぶことで、CPU負荷が大きく下がり、カクつきが改善される可能性があります。
「映像エンコーダ」のおすすめは、「NVIDIA NVENC H.264」です。すべての環境で選べるわけではありませんが、無難な選択です。
ほかにもYouTubeで配信するのであれば、「NVIDIA NVENC AV1」や「NVIDIA NVENC HEVC」なども視野に入ってきます。下記ページに方法をまとめました。
出力解像度・フレームレートを下げる
出力解像度とフレームレートの両方を下げることで、PCの負荷を軽減させます。
- 「設定」→「映像」の順にクリックする。
- 「出力 (スケーリング) 解像度」を下げる(例 : 1280x720、640x360)。
- 「FPS 共通値」(フレームレートのこと)を「30」(単位はfps)にする。
- 「OK」をクリックする。
解像度の設定は、数字が小さいほどPCの動作が軽くなります。たとえば、640x360は1280x720よりも軽くなるということです。
ただし、解像度が低いと映像がボヤけたり、文字が小さくなって読みづらくなることがあるでしょう。画質との関係で無難なのは1280x720です。
PCスペックに余裕がない場合は、以下の2点を意識します。
- 「出力 (スケーリング) 解像度」を1920x1080にするのは避ける
- 「FPS 共通値」を60fpsにするのは避ける(30fpsにする)
もしPCスペックに余裕があるなら、「FPS 共通値」は60fpsにしてもかまいません。そのほうが30fpsよりも滑らかに動きます。あくまでも余裕がある場合です。
▲出典 : 『スーパーマリオワールド』(任天堂)より
解像度・フレームレートの詳細については、下記ページにまとめました。
「ゲーム」側のグラフィック設定を下げる
PCゲーム配信の場合、PCの動作が重くなりがちです。
▲出典 : 『Apex Legends』(Electronic Arts)より
とくに、配信しながら最新の重量級タイトルを最高画質でプレイするのは、ほとんどのPCで無謀と言ってもよいかもしれません。
重要なのは、ゲーム内のグラフィック設定を下げることです。具体的には、ゲームのオプション設定を開き、以下の設定を下げましょう。
- 画質・品質
- 解像度
- フレームレート(無制限にせず60fpsに)
▲出典 : 『フォートナイト』(Epic Games)より
画質・品質については、たとえば「最高」設定にしているなら、「高」や「中」などに落とします。あるいは、「低」にしてもよいかもしれません。
また、120Hz以上に対応するゲーミングモニターを使用し、ふだん120fps以上でプレイしている人もいると思いますが、配信時は注意が必要です。フレームレートが大きいほどPCにかかる負荷も増えるため、スペックによってはカクつく原因になります。
もし、一般的な60Hz対応モニターを使用している場合は(大半のユーザー)、ゲーム側のグラフィック設定を開いて、最大フレームレートが60fpsであることを確認してください。60Hzモニターでは120fps/144fps/無制限にしても意味がありません。
管理者権限でOBSを起動する
OBSのバージョンが24.0.3以降で、かつGPU使用率が95%以上と高い場合に、OBSを管理者権限で起動する方法です。これによりOBSの優先度を上げます。
OBSには通常版とSteam版があり、管理者権限で起動する方法が異なります。
<通常版>
まずは通常版のほうからです。
- OBSを終了する。
- OBSのアイコンを右クリックし、「プロパティ」を選択する。
- 「互換性」タブを開き、「管理者としてこのプログラムを実行する」にチェックを入れる。
- 「OK」をクリックする。
- OBSを起動する。
<Steam版>
Steam版だと、上に書いたやり方では「互換性」タブがありません。以下のようにします。
- Steamクライアントの「ライブラリ」を開く。
- 左メニューにある「OBS Studio」を右クリックする。
- 「管理」から「ローカルファイルを閲覧」をクリックする。
- 「C:\Program Files (x86)\Steam\steamapps\common\OBS Studio」が開く。
- 「bin」フォルダー→「64bit」フォルダーの順に開く。
- 「obs64.exe」上で右クリックして「プロパティ」をクリックする。
- 「互換性」タブを開き、「管理者としてこのプログラムを実行する」にチェックを入れる。
- 「OK」をクリックする。
- OBSを起動する。
管理者権限でOBSを実行することについて、NVIDIA NVENC OBS Guideには以下のように書かれています。
If your GPU utilization is above 95% Windows will start prioritizing the game over everything; this can, in some cases, make your stream lag. To solve this, OBS added an option in OBS 24.0.3 to prioritize OBS Studio over the Game. Just run OBS as Admin, and your stream will be silky smooth.
ただ、そのいっぽうでPC Watchには以下のような記事も掲載されています。
しかし、Windows 11では、管理者権限で起動しなくても適切な優先度でOBSが処理されるので、これが原因でコマ落ちしたりすることはないようだ。
むしろ、OBSの優先度が高すぎるとゲームのフレームレートが落ちることがある。
この管理者権限でOBSを起動する方法については、あまり期待しすぎない程度に試してみてください。
HAGSをOFFにする
Windowsの「ハードウェアアクセラレータによるGPUスケジューリング」(HAGS)をOFFにする方法です。
この機能はGPUがビデオメモリーを制御することでCPU負荷を減らせる効果があるのですが、ONになっていることで逆に問題が起きるケースがあります(例 : フリーズ、0kb/sになる)。
参考How To Disable Windows 10 Hardware GPU Scheduler
そこでHAGSをOFFにしてみましょう。
- デスクトップ画面上の空白箇所で右クリックする。
- 「ディスプレイ設定」をクリックする。
- 下のほうにある「グラフィック」をクリックする。
- 上のほうにある「既定のグラフィックス設定を変更する」をクリックする。
- 「ハードウェア アクセラレータによる GPU スケジューリング」をOFFにする。
- PCの再起動を促されるので指示に従う。
HAGSが役立つ場面もありますが、少なくともOBSを使用時に問題を切り分けたいときはOFFにしておいたほうが無難です。ケースバイケースという点に留意してください。
ソースを削除する
意外と無視できないのが、追加したソースが原因になっているケースでしょう。
- ゲームキャプチャ
- ブラウザ
- 画像
- テキスト (GDI+)
- DistroAV(旧OBS-NDI)
たまにしか使わないソースはもちろん、削除し忘れていたソースについても削除してください。
覚えておきたいポイントは4点です。
- ソースを増やしすぎない(減らす)
- あらゆるソースを疑う
- いったん削除してみる
- 重複しているソースに注意する
ひょっとしたら「せっかく追加したソースを削除したくない」という人もいるかもしれませんが、シーンコレクションを使えば保存しておけます。
また、ソースの整理方法については下記ページにまとめました。
プリセットを変更する
プリセットを下げます。
プリセットで選べる項目は、「映像エンコーダ」でなにを選んだかによって異なります。
たとえば、「映像エンコーダ」で「NVIDIA NVENC」を選んだ場合は、「P4: Medium (中品質)」よりも数字の小さいものを選んでください。
「P1: Fastest (低品質)」がもっとも軽いプリセットです。
デュアルモニターなら60Hzに
Windows PCの場合、デュアルモニターが原因で配信画面がカクつくことがあります。たとえば、以下のような環境です。
- 高リフレッシュレートのメインモニター(120/144/240Hz)
- かつ60Hzのサブモニター
この場合、「OBSを起動しただけで重くなる」と訴える人が多いのですが、GPUの設定を変更して60Hz出力に落としてみてください。簡単に設定できます。
- デスクトップ画面上で右クリックし、「ディスプレイ設定」をクリックする。
- 「ディスプレイの詳細設定」をクリックする。
- 「ディスプレイ 1 のアダプターのプロパティを表示します」をクリックする。
- 「モニター」タブを開く。
- 「画面のリフレッシュ レート」を「60 ヘルツ」にする。
または、OBSのプレビューを無効にすることで対処できることもあります。
- OBSの画面上で右クリックする。
- 「プレビュー有効化」のチェックを外す。
なお、60Hzどうしのモニターでも問題が起きるという人もいるかもしれません。その場合は、いったんシングルモニターにしてください。
垂直同期、G-SYNCの設定を変更する
上記モニターの話と関連しますが、垂直同期(VSYNC)、およびG-SYNCの設定を変更します。GPU負荷を下げます。
Geforceシリーズのグラフィックボードを搭載しているPCの場合、以下のようにすれば垂直同期の設定ができます。
- デスクトップ画面上で右クリックする。
- 「その他のオプションを確認」から「NVIDIA コントロールパネル」をクリックする。
- 「3D 設定の管理」をクリックする。
- 「グローバル設定」タブを開く。
- 「垂直同期」の設定を変更する。
- 「適用」をクリックする。
▲垂直同期の設定は、どれがベストなのか難しいところです。画面の見え方や操作性にも影響するので、いろいろ試してみてください。
PCゲーム内のオプションにも垂直同期の設定があります。たとえば、バトルロイヤルゲームの『Apex Legends』については、OBSの開発者が以下のようにツイートしています。
If you stream @PlayApex and are having FPS issues with OBS due to a maxed-out GPU, you'll need to reduce GPU usage so that OBS can run as well. The quickest way to do this is to enable Vsync with triple buffering and disable Windows 10 Game Mode. https://t.co/FOPmDyJMNx
— OBS (@OBSProject) February 8, 2019
▲Apex Legendsの初期設定です。「ビデオ」タブ→「垂直同期」が「トリプルバッファ」になっています。
G-SYNC対応モニターを使用している人は少ないと思いますが、G-SYNCの設定も変更してみましょう。
- デスクトップ画面上で右クリックし、「NVIDIA コントロールパネル」をクリックする。
- 「G-SYNC の設定」をクリックする。
- 「G-SYNCの有効化」の設定を変更する。
▲G-SYNC対応モニターの場合は、左メニューに「G-SYNCの設定」が表示されます。上記画像で「G-SYNC、G-SYNCとの互換性を有効化」と表示されているのは、FreeSync対応モニターだからです(参考)。
特定のプロセスを閉じる
Windowsで実行中のプロセスが原因でPCの動作が重くなっていることがあります。タスクマネージャーを開いてください。
- 画面下部のバー(タスクバー)のなにもない場所で右クリックする。
- 「タスク マネージャー」を選択する。
- 「プロセス」をクリックする。
「CPU」と書かれている部分の数字が大きいと(例 : 100%)、PCの動作が重くなり、配信画面がカクつく場合があります。
「CPU」の部分をクリックして、項目をCPU使用率が高い順に並び替えましょう。あとは終了させたいプロセスを選択後、「タスクの終了」をクリックします。
しばしば言われるのは、VTuber用のソフト(例 : VTube Studio、Animaze)との組み合わせでゲーム配信すると重いというものです。いったん同ソフトを終了してどうなるか、試してみたほうがよいかもしれません。
見覚えのないプロセスについては、Googleで検索してから終了してください。Windows Updateの可能性もあります。
なお、過去にはDiscordなど、PCゲームと直接関係なさそうなアプリが原因で重くなる(GPU性能が低下)ケースもありました。
参考 Discord実行時にGeForceのメモリクロックが抑制される問題が修正
その他、見直すべき点
最後に、ほかに見直すべき点をまとめておきます。
- 「画面キャプチャ」を使用している場合は、それ以外の方法で画面を取り込む
- PCゲームの場合、ゲームをフルスクリーンで起動し、「ゲームキャプチャ」を使う
- ブラウザーを閉じる
- YouTubeの場合は、遅延設定を「低遅延」にする(いったん「超低遅延」をやめる)
- 重いプラグイン(例 : StreamFX)を使わない
- GeForce Experienceの「ゲーム内のオーバーレイ」を無効にする(右上の歯車アイコンから設定)
録画特有の注意点もあります。
- 配信しながら録画している場合は、録画をやめる(設定例)
- 動画の保存先を変更する(例 : HDD → SSD、 SSD → HDD)
- コーデックを変更する
- ビットレートを下げる
- 動画再生アプリを別のものに変更する
その他、「AverMediaの中の人」による解説動画も参考になります。
なお、キャプチャーボードを使用していて、かつOBSに映っているゲーム画面を見ながらプレイする場合、遅延が原因で操作が重く感じるケースもあります。
まとめ
配信画面がカクつくパターンは、大きく2種類に分類できます。
- PCスペックが原因のケース
- PCスペックと関係ない部分の設定が原因になっているケース
つまり、カクついているという結果だけでは、PCスペックが原因になっているのかどうかはわかりません。各種情報を参照し、原因を突き止める必要があります。
たとえば、統計ウィンドウ(「表示」→「統計」)やタスクマネージャーを参考にしましょう。
PCスペックが原因でカクつく場合、対処法はあまり多くありません。
- 各種設定を下げる
- 高性能なPCに買い換える
- 高性能なグラフィックボードを増設する
- 2台のPCを使って配信する(2PC配信)
新しくPCを買う場合の選び方、およびPCパーツについては、下記ページにまとめておきました。
なお、このページの解説を作成するにあたり、下記サイトを参考にさせていただきました。
2006年から15年以上、ゲーム実況のやり方の解説記事を書いています。書いた記事数は1,000本以上。ゲーム配信、ゲーム録画、動画編集の記事が得意です。
記事はていねいに、わかりやすく!ゲーム実況界の教科書をめざしています。
コメント
こんにちは。OBSStudioをつかって画面がカクカクするのではなく、画面が震えるようなノイズが入るのですが、こういった例はありますでしょうか?
PCはwindows10でCPUはi7です。
ATEM miniを使いPCに接続した場合、OBSStudio画面で症状が現れます。
同じ環境でZoomを利用するとその画面のブレやふるえる状況にはならないため何らかの理由があるのではと思いご質問させて頂きました。